2021.1.18

円滑な第三者承継に向けて 第 3 回 ~マッチングに向けた準備~(弁護士:朝妻太郎)

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 朝妻 太郎

朝妻 太郎
(あさづま たろう)

一新総合法律事務所
理事/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:東北大学法学部

関東弁護士会連合会弁護士偏在問題対策委員会委員長(令和4年度)、新潟県弁護士会副会長(令和5年度)などを歴任。主な取扱分野は企業法務全般(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)のほか、離婚、不動産、金銭問題など幅広い分野に精通しています。
数多くの企業でハラスメント研修、また、税理士や社会保険労務士、行政書士などの士業に関わる講演の講師を務めた実績があります。
著書に『保証の実務【新版】』共著(新潟県弁護士会)、『労働災害の法務実務』共著(ぎょうせい)があります。

 

過去の連載記事はこちら

 

今回は、事業の譲り渡しの意向が決まった後、マッチングに向けて準備すべき事項について検討したいと思います。

仲介者、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)を選定するかどうか

仲介(業)者とは、譲渡側・譲受側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う機関(民間業者等)です。
M&Aを進めるにあたり、スキーム構築からマッチング、最終契約に至るまで仲介者が全てフォローをします。
譲渡側・譲受側双方と契約し、双方から手数料を取る点が特徴的です。
なお、弁護士は、交渉当事者双方の代理をすることはできないので、仲介者となることは想定していません。

 

次に、FAは、譲渡側もしくは譲受側の一方との契約によりマッチング支援を行う機関をいいます。
一方当事者のアドバイザーですのでイメージしやすいかと思います。
中小企業のM&Aでは、顧問税理士がFA役を担うこともあれば、顧問税理士ではなく、M&Aの高度な専門知識を持った別の税理士、公認会計士、民間業者が就任することもあります。

 

 

依頼する場合には仲介契約もしくはFA契約を締結しますが、経営者が、内容確認不十分な状態で言われるままに契約しているケースをよく目にします。

特に注意を払うべき事項として以下の点が挙げられます。

 

◆費用体系の確認

どの時点でどのような費用が発生するのか。
特に報酬の発生条件、金額の算定方法(着手金の要否、中間金、月額報酬の金額、最終報酬額の算定方法)、テール条項(仲介契約等が終了した後一定期間内に譲渡側がM&Aを行った場合に、仲介契約等が終了しているにもかかわらず、仲介者等が手数料を請求できるよう定めた条項)の有無等。

 

◆秘密保持条項の内容

M&Aに関連する情報が外部に漏れることは、手続に重大な影響を与えますので、秘密保持に関する規定確認が必要。

 

◆専任条項

依頼した仲介者以外にM&Aの仲介依頼することを禁止する条項です。

違反時の制裁の内容、専任条項の効力期間等に注意が必要。

 

バリュエーション(企業価値評価、事業価値評価)の実施

譲渡側の企業が、自社の企業価値を分析し、評価します。

これが売却代金決定の重要な要素となります。

通常、経営者自身が作成することは困難ですので、仲介者やFAが作成することがほとんどでしょう。

後に、譲受企業側が、譲渡企業の調査(デューデリジェンス。以下「DD」と言います。)を実施しますが、中小企業のM&AではDDもバリュエーションの内容をベースに、それと齟齬がないかという形で調査されることが多いと思われます。

企業価値を正確に算定しなければ、後の契約時・契約後にトラブルが発生することもままありますので、適切な評価の実施を心がける必要があります。

 

 

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2020年10月5日号(vol.249)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

 

第4回の記事はこちらから

 

一新総合法律事務所では、案件ごとに、依頼会社の予算感やM&Aの規模感などから適切な関与の程度と費用を見積もり、ご提示し、ご納得いただいた上で関与させていただいております。

貴社のM&Aが成功裏に終わり、事後のトラブルをできるだけ回避できるよう、法的な側面について、弁護士に相談することを是非一度ご検討下さい。

 

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