2021.2.25
育児介護休業法及び 関連法規改正に伴う対応について(弁護士:勝野照章)
育児・介護休業法関連法規の改正
令和元年12月27日に改正育児・介護休業法施行規則及び改正指針が公布又は告示され、令和3年1月1日からは育児や介護を行う全ての労働者が子の看護休暇や家族の介護休暇を時間単位で取得することができるようになりました。
今回はこの改正の内容について見ていきたいと思います。
まず初めに、厚生労働省において発表されている改正のポイントをまとめた表が参考となりますので、次の表をご覧ください。
改正部分だけ見ますとあまり複雑な変更ではなく、これまで半日単位でしか取得できなかった看護休暇や介護休暇が時間単位で取得できるようになったというものです。
なお、注意を要する点として、労使協定の締結によって時間単位での看護や介護休暇の取得の対象から除外される労働者も、それまでと同様、半日単位における休暇の取得は認めるよう配慮しなければいけません。
仮に、労使間の合意なく、半日単位での看護や介護休暇の取得をなくし、日単位での休暇取得しか認めないとすると、労働契約の不利益変更として違法となるおそれがあります。
改正の経緯
育児・介護休業法関連法規の改正は頻繁に行われていますが、今回の改正は子の育児や家族の介護における実情を反映させたものです。
子の育児や家族の介護では、常時付き添いが必要とされる場面も限られており、行政の手続や対象家族の通院付き添いなど、必要となる行為に1日または半日を必要としない場合も多くあります。
そこで、柔軟に子の看護や家族の介護を実現するため、時間単位での休暇取得が検討されたのです。
対象者
看護休暇や介護休暇を取得できる対象者は全労働者となります。
そして、労働者が看護や介護休暇の申出を行った場合、原則事業主はこれを拒むことができません。
なお、例外として、労使協定によって
①入社6か月未満の従業員及び
②1週間の所定労働日数が2日以下
の従業員からの申出は拒むことができるとされています。
また、「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定を締結した場合にも、時間単位の看護や介護休暇の取得の申出を拒むことができます。なお、このような場合でも、労使間で工夫し、より多くの労働者が時間単位の看護や介護休暇を取得できるようにすることが望ましいとされています。
時間単位での休暇の取得
時間単位での休暇の取得とは、要件だけを見ると問題は少なく思えますが、適用にあたって注意しなければならない部分がいくつかあります。
まず、時間とは1時間の整数倍の時間となり、分単位の取得はできません。
ただし、例えば1日の所定労働時間が7時間30分の場合、時間単位で看護や介護休暇を取得すると、「30分」という端数は切り上げられることとなります。
具体的には下の図のとおりです。
このように、1日の所定労働時間数に1時間に満たない端数がある場合、端数を切り上げることとしているのは、所定労働時間数に1時間に満たない時間数がある労働者にとって、日単位で看護や介護休暇を取得する場合と比べて不利益とならないようにする趣旨です。
次に、日によって所定労働時間数が異なる労働者が休暇を取得する日の所定労働時間数と同じ時間数の看護や介護休暇を取得する場合、休暇を日単位として取り扱うか時間単位として取り扱うかで労働者が不利になる場合があります。
そこで、時間単位で看護や介護休暇を取得する場合の「時間」は、看護や介護休暇を取得しようとする日の所定労働時間数未満の時間とし、休暇を取得する日の所定労働時間数と同じ時間数の看護・介護休暇を取得する場合には、日単位での看護・介護休暇の取得として取り扱うこととなっています。
以上のように、時間単位での看護や介護休暇の取得は、労働形態や労使間の関係によって複雑な取り扱いとなっており、使用者としては労働者にとって不利な適用をしないよう注意する必要があります。
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2020年12月5日号(vol.251)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。