契約書チェックの基本~売買基本契約書の場合~(弁護士:佐藤 明)

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弁護士 佐藤 明

一新総合法律事務所
弁護士 佐藤 明

一新総合法律事務所副理事長/長岡事務所長/2002年弁護士登録

依依頼者の話によく耳を傾け、相手方の主張・立場も視野に入れた上で事案全体を把握し、依頼者の真の利益を図る方法を検討していきたいと思います。 長岡地域を中心に皆様方のお役に立てるよう、日々研鑽を積み、事件解決に全力を尽くします。

はじめに

会社の取引で取引相手と契約書を交わす場合、どのように契約書をチェックしているでしょうか。

以下に、商品の継続的な売買の基本契約書を例に、基本的なチェックの仕方などを説明します。

基本契約と個別契約について

継続的な取引では、通常は基本契約と個別契約が締結されます。

基本契約では、取引で共通の内容をあらかじめ定めて、具体的な個別契約は注文書等で必要な範囲に限定して合意されます。

この個別契約で基本契約と異なる合意をした場合、一般に個別契約が優先すると考えられますが、後々のトラブル防止のため基本契約で明確にすべきです。

チェックの視点

(1)契約書の目的

契約書の目的は、契約内容を明確にして将来のトラブル防止やトラブルが発生した場合の証拠化等にあります。

それらの目的意識がチェックの際に必要です。

(2)契約内容に関する規定

民法等の契約・債権の規定は概ね任意規定であり当事者間で法律と異なる契約内容も可能です。

自社に有利な契約内容を提案する場合もあれば、相手方から有利な内容を提案されることもあり得ます。

現実には取引先との関係性・力関係が契約内容に影響すると思います。

ただ、弱い立場でも自社に不利益な内容には、公平な内容となるよう働きかける姿勢は重要です(結果は別としても)。

そのため基本となる法律の知識が必要です。

(3)ひな形利用の注意点

書籍やインターネット等に、契約書のひな形等多数の有用な情報がありますが、ひな形は一般的な内容にとどまり、その利用には具体的な取引に適切かを検討すべきです。

また、法改正等にアップデートしているかも確認が必要です。

主な条項について

(1)商品特定と代金支払

商品の特定は売買の重要な要件であり、後述の契約内容に適合するかどうか引渡しの際のトラブルを防止するために重要な内容です。

そのため具体的かつ明確に定める必要があります。

基本契約では、支払条件等の継続的なルールを明確にしつつ、実際の取引には注文書等で示すことになります。

商品の個数や代金は個別契約で示されるので、基本契約では支払条件や増加費用等といった個々の売買の共通事項を規定します。

代金支払と商品の引渡しは同時履行が原則であり、弁済期をいつにするかは、引渡しとの関係で重要な要素となるので、また貴社の実務で時期としてどの程度が相当か慎重に定めるべきです。

(2)引渡し・検収

前述の代金支払に関連しますが、引渡しや検収により、商品の所有権が移転して、それらの完了で代金支払義務が生じるのが一般です。

とくに商品として合格かどうかの判断のために検収が必要な場合には、その条件を明確にしておく必要があります(検収では商法にも留意)。

(3)契約不適合

近時の民法改正で、売主は引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものがあるときに契約不適合責任を負い、買主は、履行追完・代金減額・損害賠償・解除等の請求が可能とされています。

旧法の瑕疵担保責任が改正されたものであり、期間制限等も併せ特に注意が必要です。

(4)契約解除

民法では一般的な解除事由が定められていますが、そのような事由に関わらず契約継続が困難となる事由等を定めておくべきです。

ひな形に一般に挙げられていますが、支払停止、破産手続開始・民事再生開始、差押等、またそれに準じる事項が生じた場合などが規定されると考えられます。

それにより取引先の不安定な状況に対応することになります。

その他、反社会的勢力排除の条項も検討すべきです。

(5)損害賠償

契約違反により損害が生じた場合に、契約の解除だけではなく損害賠償の規定も定めることになります。

このような規定がなくとも、民法の債務不履行責任に基づく損害賠償請求ができますが、賠償の範囲を明確にするために規定することに意味があります。

たとえば民法の範囲以上に責任を追及できるようにするか、責任が拡大しすぎるのを制限するようにするか、貴社の立場で変わってきます。

(6)契約期間

継続的な基本契約では有効期間を定めるべきです。

有効期間が経過すれば、契約が終了するわけですが、契約の継続を前提とすれば一定期間前までに終了の申入れをしなければ更新する条項を入れる必要があります(自動更新)。

(7)合意管轄

取引上のトラブルを訴訟で解決せざるを得ない場合、第一審の管轄裁判所を合意して決めておくものです。

取引先が自社から遠方にある場合に、取引先の近くの裁判所か自社近くの裁判所で訴訟することになるかでは負担がかなり違ってきます。

そこで、自社所在地の地方裁判所を専属的に管轄とすべきといえます。

(8)その他

このほかにも、期限の利益喪失、秘密保持、個人情報保護の条項など機会をみて説明できればと思います。


<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2022年2月5日号(vol.265)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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