2018.6.20

平成28年9月28日名古屋高裁判決~定年後再雇用に際し全く別個の職種提示をすることは 解雇に相当する事情がない限り許されない~(弁護士:五十嵐亮)

事案の概要

Aさんは、B社(愛知県豊田市本社を置く、自動車、船舶、航空機等の製造、賃貸、修理等を目的とする会社)に事務職(主任)として勤務していたところ、Aさんは60歳に達し定年退職しました。

 

会社は、就業規則に基づき、Aさんをパートタイマーとして再雇用することにし、再雇用後の労働条件として、雇用期間1年間、時給1000円、主な業務は、シュレッダー機ゴミ袋交換、再生紙管理、業務用車掃除、清掃(フロアー内窓際棚、ロッカー等)等を提示しました。

Aさんは、この労働条件を拒否したところ、再雇用を拒否されました。

Aさんは、このような会社の対応を違法とし、損害賠償請求を求めました。

 

裁判所の判断

名古屋高裁は、この事案に関し、B社の対応を違法とし、約120万円(パートタイマーとして1年間再雇用された場合の賃金及び賞与の合計)の支払いを命じました。

まず、裁判所は、定年後再雇用をする場合にそれまでと全く異なる業務内容を命じることは許されるかという点について、60歳以前の業務内容と異なった業務内容を示すことは許されるが、両者が全く別個の職種に属するなど性質の異なったものである場合には、もはや継続雇用の実質を欠いており、従前の職種全般について適格性を欠くなど通常解雇に相当する事情がない限り、そのような業務内容を提示することは許されないと解すべきであると判断しました。

 

そして、本件では、全く別個の職種であると認定したうえで、Aさんには、同僚や上司との平穏なコミュニケーション能力を欠き、けん責処分の処分歴があったことを考慮しても、Aさんが、事務職全般の適格性を欠くとまでは認められないとして、B社の対応は、高齢者雇用安定法の趣旨に反する違法なものであり、B社の対応は違法であると判断しました。

ポイント

本判決は、定年後再雇用に際し全く別個の職種提示をすることは解雇に相当する事情がない限り許されないとの判断を示しました。

どのような場合に「全く別の職種」に該当するかが不明確ですが、少なくとも、本判決の事案のような場合には、違法とされるおそれがありますので、注意が必要です。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 五十嵐亮

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2017年7月5日号(vol.210)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。