2018.12.25

「退職代行サービス」をご存じですか?(弁護士:下山田聖)

1.「退職代行サービス」をご存じですか?

「退職代行サービス」をご存じですか?

 

昨今、弁護士以外の者が退職代行サービスを提供することが多くあります。

2.代行業者にはできることに限度があります。

弁護士法72条により、弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事務を行うことは禁止されています。

ここにいう「法律事務」というのは、報酬を得る目的で示談等の交渉を行うことも含まれています。

そのため、弁護士でない者が行う退職代行サービス業者の場合には、退職条件等について会社と交渉をすることはできず、「退職したいという本人の意思やその条件をただ伝える」という民法上の「使者」という役割が限度です。

 

これを超えて、弁護士でない退職代行業者が、本人を代理して、会社との間で何らかの交渉を行うことは、「非弁行為」となり弁護士法によって禁止されているということです。

 

「退職代行サービス」をご存じですか?②

 

3.「代理人」と「使者」

とはいえ、業者が本人の要望を伝える過程で、会社の側からこれに反する要望が出され、これに対して業者が何等かの返答をすることもあるでしょうから、「代理人」と「使者」の境界は、実際問題としてはかなり曖昧であると思います。

 

4.退職とはどういうこと?

 

 

さて、「退職」を法的に整理すると、「雇用契約の解除」ということになります。

すなわち、会社と雇用契約(「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」契約〔民法623条〕)を結んだうえで仕事をしていたところ、この契約の効力をなくし、会社との間の法的な関係性をなくすということです。

 

⑵ 

雇用契約締結時に当事者が期間を定めなかったときは、民法上、いつでも解約の申入れをすることができ、雇用契約自体は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了するのが原則です(民法627条1項)。

そのため、純粋に法的な側面からみると、退職(=雇用契約の終了)をするにあたっては、会社と協議をする必要はなく、当事者からの解約の申入れから2週間を経過すれば終了することになります。

(ただし、会社側からの解雇については、労働法上の制約を受けるため、上で述べたような民法の原則よりも要件が加重されています。)

5.退職代行業者とのやりとり

退職代行業者を通して、従業員から退職の意思表示があった場合には、まずは、委任状の提示を求める等して、当該従業員と退職代行業者との法的な関係性を確認する必要があります。

また、会社から当該従業員に対する要望等がある場合には、その旨を明確にし、誤解のないように退職代行業者に伝える必要があります。

会社からの要望等については、後日の争いや趣旨が誤って伝わることがないように、書面の形で回答することとし、口頭でのやり取りは避けた方がよいでしょう。

 

退職代行業者が、「使者」としての役割を超えて、当該従業員の「代理人」として交渉を継続してくるような場合には、当該行為は非弁行為であるとして弁護士法72条に違反する可能性がある旨を指摘し、今後は対応しないという選択肢もあり得るでしょう。

 

6.退職時トラブルでお悩みなら…

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 下山田 聖

下山田 聖
(しもやまだ さとし)

一新総合法律事務所 
理事/高崎事務所長/弁護士

出身地:福島県いわき市
出身大学:一橋大学法科大学院修了
主な取扱分野は、企業法務(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)、交通事故、金銭問題等。そのほか離婚、相続などあらゆる分野に精通しています。
企業法務チームに所属し、社会保険労務士を対象とした労務問題解説セミナーの講師を務めた実績があります。

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