従業員コンプライアンス教育<第3回>(弁護士:薄田 真司)

この記事を執筆した弁護士
弁護士 薄田 真司

一新総合法律事務所
弁護士 薄田 真司

一新総合法律事務所 新潟事務所所属/2018年弁護士登録/企業法務チーム所属

私の目指す弁護士像は、企業や市民に身近な法律問題を広く扱える町弁です。企業や市民の方々にご満足いただけるよう、誠心誠意、真心を込めて対応させていただきます。

従業員の皆さんに理解を促すべき法律問題の3弾です。

今回は、青少年保護育成条例を取り上げます。

【事例】

新潟市に住む男性A(30歳)は、職場の同僚から勧められ、婚活目的でマッチングアプリの利用を開始した。

Aは、同アプリ上で知り合った女性Bと意気投合し、平日仕事終わり後の午後8時から飲食店で会うことになった。

Bとのアプリ上でのやりとりによると、Bは、23歳であり、新潟市内に居住し、同市内の会社に事務員として勤務しているとのこと。

アプリ上、Bの「本人確認済み」との記載は確認できた。

AはBと飲食店で実際に会って話をしたところ、Aの仕事の話やBの趣味の話で盛り上がり、あっという間に午後11時の閉店時間となった。

このとき、BはAに次のとおり話した。

「実は、私は17歳で、まだ高校生なの。同級生のCに振られたばかりで新たな刺激が欲しくなったの。それで、よく間違えられるほど外見の似ている姉の免許証を使ってマッチングアプリに登録したの。あと1時間だけでいいの。もう少し、Aさんとお話がしたいな。」

Aは、次のとおり考えて、Bを同伴し、2件目の飲食店へ向かった。

「もう高校生なのだから、一人の大人だろう。特にやましい目的があってBさんと会っているわけではないし、あと1時間程度なら大丈夫だろう…。」

「婚活」という言葉は世の中に定着しました。

昨今の新型コロナウイルス禍の影響もあり、マッチングアプリが婚活市場の中で台頭してきたようです。

事例ですが、Aは、Bの深夜連れ出し行為を理由に、新潟県青少年健全育成条例違反に問われ(同条例第22条の2第1項)、20万円以下の罰金に処される可能性があります(同条例第29条第3項第13号)。

「罰金」は刑事罰ですから、「うっかり」ではすみません。

相手方から誘ってきたといっても未熟な高校生ですから、Aとしては、急いでBの両親に連絡する、警察へBの保護を求める、などの良識ある行動をとるべきでした。

深夜連れ出し行為の禁止(同条例第22条の2第1項)

「何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。」

青少年:18歳に達するまでの者(婚姻した女子を除く。)(第14条第1号)

深夜:午後11時から翌日の午前4時までの時間(第22条第1項第3号)


<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2022年1月5日号(vol.264)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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