「ワクチンハラスメント」が急増しています(弁護士:中澤亮一)

この記事を執筆した弁護士
弁護士 中澤 亮一

中澤 亮一
(なかざわ りょういち)

一新総合法律事務所 
弁護士

出身地:新潟県南魚沼郡湯沢町
出身大学:早稲田大学法科大学院修了
国立大学法人における研究倫理委員会委員、新潟県弁護士会学校へ行こう委員会副委員長などを務めている。
主な取扱分野は、離婚、金銭問題、相続。また、企業法務(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)などにも精通しています。複数の企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。

 

「ワクチンハラスメント」が急増!

 

新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が徐々に進んできていますが、それに伴って「ワクチンハラスメント」という新たなハラスメントの問題が生じているようです。

 

「ワクチンハラスメント」とは、正確な定義はありませんが、新型コロナウイルス・ワクチンの予防接種において事実上接種を強要されたり、接種を受けないことで差別を受けたりする問題のことです(日弁連ホームページ参照)。

最近では、大阪市東成区役所で、集団接種で余ったワクチンを区職員が接種を受ける際の希望者と辞退者をリスト化しており、そのリストをメールで送信していたというニュースが記憶に新しいと思います。

 

また、日本弁護士連合会が5月14日と15日に実施した「新型コロナウイルス・ワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」には、208人からのハラスメント被害の相談が寄せられました。

すでにこのようなハラスメントの問題が発生しているのです。

 

 

上記ホットラインの結果は6月9日に公表されています。

これを見ると、医療従事者や介護関係職員からの相談が多かったようです。

具体的には、看護学生からの「ワクチン接種をしないと実習を受けさせないと言われた」という相談や、医師からの「ワクチンの安全性に疑問があり、都道府県からの接種協力要請に反対したところ、医療法人理事長から病院長を解任された」という相談、その他医療従事者からの「後輩に接種を希望しない者がおり、病院からは『接種しないなら退職』と言われている」といった相談がありました。

 

また、介護施設職員からも「アレルギー体質のため接種を拒否したが、施設側から『打つと言わないと動きません』『(打たないのは)あなただけですよ』などと言われた」という相談があったようです。

 

ワクチン接種強制は違法なパワハラになることも

ワクチンの接種は強制されるべきものではなく、あくまで個人の選択により行われるものです。

したがって、とくに労働関係において、使用者から被用者に対して、ワクチンの接種に関し「接種しないなら辞めてもらいたい」といった退職勧奨を行ったり、接種しないことを理由に不利益な扱いを行ったりすると、違法と判断される可能性は十分にあるといえます。

場合によっては、違法なパワーハラスメントと判断され損害賠償請求を受けることもあり得ると思います。

 

企業には、新型コロナウイルス感染者に対するハラスメントはもちろんですが、ワクチン接種に関するハラスメントについても、十分な防止策が求められることになるでしょう。