2021.6.21
「ワクチンハラスメント」が急増しています(弁護士:中澤亮一)
「ワクチンハラスメント」が急増!
新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が徐々に進んできていますが、それに伴って「ワクチンハラスメント」という新たなハラスメントの問題が生じているようです。
「ワクチンハラスメント」とは、正確な定義はありませんが、新型コロナウイルス・ワクチンの予防接種において事実上接種を強要されたり、接種を受けないことで差別を受けたりする問題のことです(日弁連ホームページ参照)。
最近では、大阪市東成区役所で、集団接種で余ったワクチンを区職員が接種を受ける際の希望者と辞退者をリスト化しており、そのリストをメールで送信していたというニュースが記憶に新しいと思います。
また、日本弁護士連合会が5月14日と15日に実施した「新型コロナウイルス・ワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」には、208人からのハラスメント被害の相談が寄せられました。
すでにこのようなハラスメントの問題が発生しているのです。
上記ホットラインの結果は6月9日に公表されています。
これを見ると、医療従事者や介護関係職員からの相談が多かったようです。
具体的には、看護学生からの「ワクチン接種をしないと実習を受けさせないと言われた」という相談や、医師からの「ワクチンの安全性に疑問があり、都道府県からの接種協力要請に反対したところ、医療法人理事長から病院長を解任された」という相談、その他医療従事者からの「後輩に接種を希望しない者がおり、病院からは『接種しないなら退職』と言われている」といった相談がありました。
また、介護施設職員からも「アレルギー体質のため接種を拒否したが、施設側から『打つと言わないと動きません』『(打たないのは)あなただけですよ』などと言われた」という相談があったようです。
ワクチン接種強制は違法なパワハラになることも
ワクチンの接種は強制されるべきものではなく、あくまで個人の選択により行われるものです。
したがって、とくに労働関係において、使用者から被用者に対して、ワクチンの接種に関し「接種しないなら辞めてもらいたい」といった退職勧奨を行ったり、接種しないことを理由に不利益な扱いを行ったりすると、違法と判断される可能性は十分にあるといえます。
場合によっては、違法なパワーハラスメントと判断され損害賠償請求を受けることもあり得ると思います。
企業には、新型コロナウイルス感染者に対するハラスメントはもちろんですが、ワクチン接種に関するハラスメントについても、十分な防止策が求められることになるでしょう。