2018.6.1
長澤運輸事件の最高裁判決が出ました(弁護士:五十嵐亮)
弁護士の 五十嵐 亮 です。
さて、6月1日金曜日、最高裁判所において定年後再雇用の有期雇用労働者に対する賃金減額について労働契約法20条に違反しているかどうかに関して争われていた「長澤運輸事件」の判決がありました。
判決文の全文は、裁判所のホームページにて閲覧することが可能です。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/785/087785_hanrei.pdf
■まず、一般論として、以下のような判断がなされています。
①労働契約法20条に定める「その他の事情」は、職務内容及び変更範囲並びにこれらに関連する事情に限定されるものではない
②有期雇用労働者が定年退職後に再雇用された者であること(長期雇用が通常予定されていない点、定年退職までの間無期契約者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることが予定されている点)は、「その他の事情」として考慮される事情に当たる
③個々の賃金項目の差異が不合理か否か判断するにあたっては、賃金の総額の比較のみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当
④③の判断の際には、他の賃金項目の有無および内容も考慮されることになる
■以上の一般論を踏まえ、最高裁は、定年後再雇用の者には支給されない、能率給、職務給、精勤手当、住宅手当、家族手当、役付手当、超勤手当および賞与について、それぞれ、差異が不合理か否かについて個別に検討・判断をしています。
■結論としては、精勤手当、超勤手当(時間外手当)についての差異が不合理・違法であると判断しています。
労働者側の請求に対しては、精勤手当の未払分相当額について(不法行為に基づく損害賠償として)支払いを命じました。超勤手当については、超勤手当の基礎に精勤手当が含まれていないので、超勤手当の額について審理を行わせるために東京高裁に差し戻しました。