退職勧奨の実施方法と注意点(弁護士:五十嵐亮)

 

この記事を執筆した弁護士

弁護士 五十嵐 亮

一新総合法律事務所
弁護士 五十嵐 亮

一新総合法律事務所理事・長岡事務所所属。 2009年弁護士登録。 事故賠償チームに所属。交通事故に関するセミナー講師実績多数。 依頼者の方々に対しては、懇切丁寧なコミュニケーションを行い、よりよい解決に導けるよう心がけております。

□退職勧奨とは?

コロナ禍において、企業再建の手段の一つとして、雇用調整を行わなければならない場合があると思います。

雇用調整の手段としては、①希望退職者募集、②退職勧奨、③整理解雇(リストラ)等が考えられます。

整理解雇は、訴訟・紛争リスクが高いため最終手段として位置づけられます。

他方、希望退職者募集や退職勧奨は、解雇ではなく、合意による退職なので、解雇に比して訴訟・紛争リスクが低いため、整理解雇の前に実施されることになります。

 

希望退職者募集と退職勧奨の違いは、前者は、従業員を特定することなく広く退職を募集するものであるのに対し、後者は、企業側が従業員を選定して勧奨する点にあります。

 

そのような性質から、退職勧奨は、人事評価や成績が低い従業員を選定して実施されることが多いといえます。

 

□退職勧奨の方法

 

退職勧奨は、文字取り、企業が従業員に対して、「退職」を「勧奨」するものです。

企業側としては、「退職してほしい」という動機・目的をもって実施してるため、その目的を達成するために、強引な説得をしてしまいがちです。

 

退職勧奨はあくまでも「勧奨」するだけであり、勧奨に応じるかどうか意思決定を行うのは従業員本人であるため、退職勧奨そのものに対する法律上の規制はありません。

もっとも、過度な勧奨行為により、従業員の自由な意思決定を阻害する事情がある場合には、従業員による退職の意思表示が取消し・無効となってしまう場合がありますので、注意が必要です。

 

この点について、東京地裁平成23年12月28日判決は、「労働者が自発的な退職意思を形成するために社会通念上相当と認められる程度を超えて、当該労働者に対して不当な心理的威迫を加えたりその名誉感情を不当に害する言辞を用いたりする退職勧奨は不法行為となる」と判断しており、裁判においては一定の判断基準となっています。

 

□従業員が退職を拒否しても退職勧奨を継続してよいか?

裁判例で問題となるケースの一つとして、従業員が退職を拒否する意思を明確にしているにもかかわらず、企業側が執拗に退職勧奨を行うというケースがあります。

 

従業員が一貫して退職勧奨に応じない旨を表明しているにもかかわらず、約2カ月の間に11回、1回につき約20分~約2時間の退職勧奨を行ったという事案で、退職勧奨が違法とされ慰謝料が認められた裁判例があります。

 

□誤った事情を伝えて退職勧奨を行ってもよいか?

よくあるケースが、「退職に応じないのであれば解雇になる」と伝えて退職に応じされようとするものです。

 

客観的にみれば解雇するほどの合理的理由・社会的相当性がないにもかかわらず、解雇が相当であるかのように伝えて退職に応じた場合に、退職の意思表示が錯誤により無効と判断した裁判例もありますので注意が必要です。

事実上も法律上も誤ったことを伝えて退職勧奨を行う場合には、退職の意思表示が無効とされてしまう場合があることに注意が必要です。

 

企業側として退職に応じないのであれば解雇を検討せざるを得ないような場合には、「なぜ解雇を検討せざるを得ないのか」という理由(解雇理由に該当する具体的事実)を具体的な根拠をもとに丁寧に説明した上で、従業員の理解を求めるように努めるべきでしょう。

 

□退職合意が成立した場合には書面の作成を

 

従業員が退職勧奨に応じてくれたと思っていても書面に残していない場合に、後で退職の合意の成立を争われることがあります(「辞めますなんて言ってない」、「無理やり言わされたので事実上は解雇だ」)。

このような紛争を防ぐために辞表を提出してもらうか、退職合意書を作成するかのいずれかをすることが必要でしょう。

このような書面を作成する場合には、退職勧奨を行ったその場で署名押印を求めると後で「無理やり署名押印をさせられた」と主張されるリスクがありますので、いったん書面を持ち帰ってもらい後日署名押印したものを持参してもらうことが望ましいといえます。

 

□退職勧奨を実施する場合には焦らず丁寧な対応を

以上のとおり、退職勧奨は解雇に比して法的リスクが低いとはいえ、企業側にとって無制限に実施できるわけではありません。

退職勧奨を実施しなければならない場面では、焦りが生じてしまう場合もあるかと思いますが、正確な情報・知識を前提に焦らず、丁寧な対応を心がけることが必要となります。

 

 

 

◆関連するコラムはこちらです◆

・希望退職者募集の注意点(弁護士:五十嵐亮)

・整理解雇を実施する場合の注意点(弁護士:五十嵐亮)

 

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