2020.9.9
根深い問題??コンビニエンスストア本部VS加盟店(弁護士:渡辺伸樹)
令和2年9月に公正取引委員会から『コンビニエンスストア本部と加盟店等の取引に関する実態調査報告書』が公表されました。
報告書の中では、全国5万7524店舗の大手コンビニエンスストアチェーンの加盟店等を対象に行われた調査結果が詳しく紹介されています。
今回はその報告書の内容をざっくりと解説いたします。
コンビニエンスストア加盟店の現状
第1部『コンビニ市場の現状等』では
・平成22年から平成31年にかけて全国のコンビニエンスストア数が1.3倍に増加していること
・1店舗当たりの人口は平成22年から平成29年にかけて22.5%減少していること
・直近10年間でコンビニエンスストアの倒産・休廃業等が約3.5倍に拡大していること
・コンビニエンスストアの従業員の給与の中央値が年間83万円増加している一方で、オーナーの収入の中央値は年間192万円減少していること(5会計年度前と直近の会計年度の比較)
等の統計データが示され、コンビニエンスストア加盟店が直面している厳しい実態が明らかにされています。
第2部『コンビニエンスストア本部と加盟店との取引状況等』では
①年中無休24時間営業(本部が加盟店に対して年中無休24時間営業を求めること)、②ドミナント出店(同一エリア内に複数の同一チェーン店舗を出店すること)の問題に焦点があてられています。
このうち、①年中無休24時間営業の問題に関しては、
・77.1%の店舗が深夜帯は赤字であると回答した
・93.5%の店舗が人手不足を感じていると回答した
・62.7%のオーナーが現在の業務時間について「どちらかといえば辛い」「非常に辛い」と回答した
等のアンケート結果が紹介され、オーナーが時短営業を望む背景に、深夜帯における採算性の悪さ、人手不足、オーナーの疲労等があることが浮き彫りになりました。
こうした調査結果をふまえ、公正取引委員会は、年中無休24時間営業の問題について、「合意すれば、時短営業への移行が認められることになっているにもかかわらず、本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し、加盟者に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には優越的地位の濫用に該当し得る」との考え方を示しています。
一方、②ドミナント出店の問題に関しては、自店の1次商圏内に後から同一チェーンの店舗が追加出店してきた際に本部からどのような配慮を受けたかとの質問に対し、62.3% の店舗が「本部からは何も提案されなかった」と回答したとアンケート結果等が紹介されています。
そして、公正取引委員会は、ドミナント出店の問題について「加盟契約において周辺地域への出店時には本部が「配慮する」と定めた上で、加盟前の説明において、何らかの支援を行うことや一定の圏内には出店しないと約束しているにもかかわらず、本部がその地位を利用してこれを反故にし、一切の支援等を行わなかったり、一方的な出店を行ったりすることにより、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合にも優越的地位の濫用に該当し得る。」との考え方を示しています。
まとめ
今回の調査報告書は、統計データや加盟店アンケート等からコンビニエンスストア加盟店が置かれている現状を明らかにしたこと、そして、年中無休24時間営業やドミナント出店の問題についての独占禁止法上の考え方を公正取引委員会が示したところに意義があるといえます。
今後の対応として、公正取引委員会は本部に対する改善要請や違反行為に対する厳正な対処を行っていくということですので、実際に処分事例が出てきた場合にはまたご紹介させていただきたいと思います。