自動運転車の実用化へ~改正道路運送車両法の成立~(弁護士:渡辺伸樹)
自動運転車の実用化に向けて、改正道路運送車両法が本年5月17日に成立しました。
日本政府は2020年をめどに、いわゆる「レベル3」の自動運転車(緊急時以外の運転を自動化し、緊急時はドライバーによる手動運転に切り替える自動運転車)を、高速道路において実用化することを目指しており、今回の法改正はそのための柱の一つです。
今回の法改正では、自動運転のために必要な車載カメラやレーダーなどを「自動運行装置」と呼び、これらを保安基準の適合検査項目に加えることが明示されました。
これに伴い、自動車整備事業者が点検・整備を実施すべき対象も拡大され、整備事業者の認証制度も改められることとなります。
もう一つの法改正の柱として、今後、道路交通法の改正が予定されています。
道路交通法が改正されれば、自動運転による走行時において、スマートフォンの使用やカーナビの視聴が可能になる見込みです。
なお、今回の法改正では無人の自動運転車(レベル4~5の自動運転車両)の実用化までは実現できず、無人の自動運転車を実用化するにはさらなる法改正が必要になります。
こうした自動運転車の実用化により、ドライバーの操作ミスによる交通事故が減っていくことは間違いありません。
その一方で、自動運転装置の欠陥や整備不良といった問題が新たに生じることが想定され、また、一度交通事故が起これば「メーカーの責任なのか?」「ドライバーの責任なのか?」といったことが論点になり、これまでとは違った形で法的紛争となることも想定されます。
自動車保険のあり方も変わってくるでしょう。
自動運転車が実用化されるそう遠くない未来に備えて、私たち消費者も常に知識をアップデートしておくことが大切といえます。
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