接客業の従業員のマスク着用を禁止できるのか?(弁護士:今井 慶貴)

 

昨年12月、イオンは、食品加工担当者など一部を除いた従業員に向けて、接客時におけるマスク着用は原則禁止にしたというニュースがありました。

 

その理由について、イオンは、

 

「客に表情がわかりにくく、声も聞こえづらくなり、円滑なコミュニケーションの妨げになる」

「風邪や体調不良のイメージを持たれ、不安を抱かれる場合がある」

 

ということです。

 

これに対しては、一部の従業員から、「マスクなしでは風邪やインフルエンザの予防ができない」という声もあり、ネット上も否定的な意見が多かったようです。イオンとしても、あくまで原則であり、上司が着用を許可するケースもあるということです。

 

他のスーパーや百貨店においても、

 

「原則着用しない」

「状況に応じて着用を認める」

「着用は推奨していない」

 

などマスク問題への対応は様々であり、どれが正解とも言い切れません。

 

法律的には、使用者には、「安全配慮義務」といって、労働者が安全で健康に働けるように配慮すべき義務があります。

 

仮に、マスクを禁止したために、従業員がインフルエンザに感染した場合に、安全配慮義務に違反するのかどうかは、必ずしも明らかではありません。おそらく、感染の危険性の程度や社会通念も斟酌して個別具体的に判断されると思われます。

 

しかし例えば、医療機関において、インフルエンザ等の感染症の流行時にスタッフにマスク着用を禁止するような場合には、安全配慮義務違反が認められるのではないでしょうか。

 

なお、私は見たことがありませんが、透明な衛生マスクが一部飲食店などで導入されているそうです。これなら表情が見えやすいのでコミュニケーションもとりやすそうですね。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。