2019.4.3
「山古志かぐらなんばん」と知的財産権(理事長:和田光弘)
1. 山古志のかぐらなんばん?
2019年3月27日の新潟日報の長岡版ニュースに「山古志かぐらなんばん」「ブランド保護へGI申請」との記事が出ていました。
リードは「長岡市山古志地域の生産者らでつくる『山古志かぐらなんばん保存会』は、地域の農林水産物・食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度に『山古志かぐらなんばん』を申請することを決めた。28日に申請し、早ければ秋にも登録される。保存会は『登録を機に、おいしさを知ってほしい』としている。」となっている。
記事中に、当の「山古志かぐらなんばん」の写真(長岡市提供)が載っている。
これはちょっと、ピーマンと勘違いしますね。
でもよく見ると、ピーマンより横長で、全体に四角い感じがするところで、四角くて、ごっつい神楽面のようで「かぐら」という名前がついたとのこと。
そして、南蛮(なんばん)というのは、戦国時代に日本に到来した「とうがらし」を意味しています。
新潟市近辺では、「なんばん」というと、青い獅子唐(シシトウ)とイメージします。
このシシトウとしそを刻んで油で炒め、これをしそ巻きにして、さらに炒めたものが、我が家の妻が作る「南蛮炒めのしそ巻」で、市販の甘いものではなく、とびきり辛く、ビールに実に合う。と、と、これは横道に逸れました。
「山古志のかぐらなんばん」は、生産者の方のご説明では、「肉厚の果肉自体はそれほど辛くなくほのかに甘みを感じるのですが、種とその周囲の白いワタには強い辛味があります。その独特の味は地元の人々に昔から親しまれ、今では長岡市を代表する野菜の一つとなっています。」ということになる。
そういえば、私も、一度依頼者の方からもらって、妻が炒め物にしたところ、えらく辛かった覚えがありますね。
2. GI申請??
この新潟日報の記事中に書かれている「GI申請」を読んで、お分かりになる方は、ほとんどいないと思う。
そもそも、「地理的表示(GI)」の法律的根拠がわからない。かく言う私もよくわからない。ネットで調べた結果を報告すると、以下の通りだ。
これは、農林水産省食料産業局知的財産課に行き着き、さらに「地理的表示保護制度担当」が存在している。
つまり、「地域には、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質の特性に結びついている産品が多く存在しています。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度が『地理的表示保護制度』です」ということで、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(略して「地理的表示法」)が根拠法となっている。
そういえば、一足先に「くろさき茶豆」も登録されてたような。
茶豆にも、いろいろありますがね、やはり「くろさき茶豆」となると、コリコリしていて、独特の風味があって、これが新潟の「茶豆」って言えるほどですから、ね。と、また脱線しました。
この「地理的表示」の英語が、「Geographical Indication」ということで、頭文字をとって「GI」となる。
3. 何がお得なのか?
まず、第一に、品質と地域が一緒に登録できて、最初に登録免許税9万円のみ払えば、あとは更新料がいらない。
次に、GIマークが使用できて、他の産品と差別化できて、品質水準を守ることができる。
第3に、(これがすごい!)不正使用については、行政が取り締まりをしてくれるので、訴訟の負担がない(弁護士泣かせか?)。
第4に、地域の生産者は、登録団体への加入や新たに登録を受けた生産者団体の構成員になれば、この地理的表示の名称が使える。
これは、国際的にも、世界貿易機構(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」にも規定され、保護されている。
すでに、世界で110カ国を超える国がこの地理的表示保護制度を導入しているというのだから、これは、農業分野の知的財産権保護の進化といっても良い。
4. いろいろ、食べてみたい!
「くろさき茶豆」は、先行して、登録されている。
他にも、北陸だけ見れば、富山の「入善ジャンボ西瓜」、石川の「加賀丸いも」「能登志賀ころ柿」、福井の「吉川ナス」「谷田部ネギ」「山内かぶら」「上庄さといも」「若狭小浜小鯛ささ漬け」「越前かに」と来て、関東になると「江戸崎かぼちゃ」「飯沼栗」「水戸の柔甘ねぎ」「奥久慈しゃも」、栃木の「新里ねぎ」、長野の「市田柿」「すんき」、静岡の「三島馬鈴薯」「田子の浦しらす」となっている。
この中で、食べたとはっきり言えるのは、去年もらった「市田柿」と、新幹線の駅で買った「田子の浦しらす」入り弁当かなあ。
しかし、新潟県はなんか損している感じがしますね。村上牛に、五泉のさといもの帛乙女(きぬおとめ)、村松栗(五泉市)、イチゴの越後姫、潟東のカモネギ(これはちと違うか?)、長岡野菜の巾着ナスに梨ナス、糸うり、ずいき、といろいろとあるのにねえ。
「南蛮炒めのしそ巻」ができるようになってから、妻にお願いをして、お作りいただき、これを食べながら(酒の肴に)、皆様と知恵を絞って考えてみるのもいいかも知れない。