注目を浴びるファクタリングとは?(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
第36回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、注目を浴びるファクタリングとは?です。
その1.ファクタリングとは?
売掛債権等を保有する者が、債権買取業者(ファクター)に債権を譲渡し、ファクターが債権の回収を行うという取引を“ファクタリング”といいます。
端的にいえば、売掛金の売買です。
自社とファクター間の契約のみで、売掛先へ通知をしない「2者間ファクタリング」と、売掛先への通知・承諾をする「3者間ファクタリング」に大別されます。
例えば、医療・介護業界では、診療・介護報酬債権の入金までの資金繰りとして3者間ファクタリングが利用されているようです。
3者間だと、直接ファクターが回収することもあり、手数料は低めになります。
しかし、売掛先との契約で債権譲渡禁止特約がある場合や売掛先に知られたくない場合には、2者間を利用するしかありません。
2者間の手数料は一般に割高です。
さて、ファクタリングの活用により、売掛金の入金が前倒しになりますので、手数料は金利と比較することができます。
ただ、あくまで債権の売買であり、貸付けではないため、利息制限法や貸金業法の適用は受けません。
もっとも、特に2社間でなされ、ファクターが貸倒れリスクを負わないような契約である場合には、実質的には貸付けにあたると判断される可能性もあり、実際に利息制限法の適用を認めた裁判例も出ています。
その2.資金繰りの救世主なのか?
そのファクタリングですが、新型コロナウイルス拡大の影響で、資金繰りが厳しい中小企業の利用が急増しているという報道を見ました。
ファクターとしても、銀行系や大手信用保証会社の系列だけではなく、ネット事業者がクラウドサービスを通してファクタリングに参入するなど、多様化しているようです。
しかし、利息制限法や貸金業法の適用がないという“規制の緩さ”を悪用して、業者の中には年利に換算すると数百%にあたる高額の手数料を請求するところもあり、中には「売掛金の即日現金化」をかかげてヤミ金まがいのことをする悪質な業者も少なからず存在します。
関わると、むしろ事業の破綻を早めてしまいかねません。
なんにせよ、ファクタリングにより利益の源泉である売掛金が削られるという面は否めませんので、危機回避のためには、公的保証による融資や各種支払猶予の手続きを試みるのが先決です。
最後に一言。
ファクタリングは、資金繰りの一手段として活用できる可能性があるものです。ただ、現状ではルールが未整備であり、事業者も玉石混淆ですので、十分な情報収集が不可欠です。
そのファクタリングは大丈夫ですか?
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