2024.5.9
被災者債務整理ガイドライン(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。
第84回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、被災者債務整理ガイドラインです。
その1.被災者の再スタートのための制度
元日に発生した能登半島地震により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
新潟市内でも、土地の液状化現象により損壊して居住が困難になった住宅がたくさんあります。
被災の程度に応じて、行政からの様々な支援措置が講じられていますが、必ずしも十分ではありません。
こうした自然災害の影響によって、住宅ローン等を借りている個人や事業性ローンを借りている個人事業主が、既往債務を抱えたままでは、再スタートに向けて困難に直面することになります。
今回ご紹介する「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(通称:被災ローン減免制度→略して「ヒサロ」)は、破産手続等の法的倒産手続の要件に該当することになった債務者について、このような法的倒産手続によらずに、債権者と債務者の合意にもとづき債務整理を行う際の準則として取りまとめられたものです。
東日本大震災後の二重ローン問題に対応するために制定された個人版私的整理ガイドラインが自然災害全般に対応するものとして発展したものであり、その後、新型コロナウイルス感染症に関連する債務問題にも適用されるようになりました。
その2.どんな手続きなのか?
手続きの特徴としては、①準則型私的整理であり、全対象債権者(金融機関等)の同意が必要、②信用情報機関に登録されない、③破産に比べて手元に残せる財産(自由財産)が多い、④所有する住宅を残せる可能性がある、⑤原則として保証人に履行が求められない、⑥弁護士、不動産鑑定士、税理士等の「登録支援専門家」の支援を無料(公費)で受けられるといった点があります。
メインバンクへの着手申出を入口、簡易裁判所の特定調停手続を出口として、手続を中立・公正な「登録支援専門家」が支援する形となっており、通常の債務整理のように弁護士や司法書士が債務者の代理人となって進める形ではありません。
被災者である個人・個人事業主であれば、誰でも使えるわけではなく、税込年収の上限額や住宅ローンの年間返済額+将来の住居費用負担額の合計額の年収に対する比率などの目安が、運用基準(非公表)として定められています。
適応判断のためには、通常の債務整理+ヒサロの知識がある弁護士に相談してみてください。
最後に一言。
被災者債務整理ガイドラインは、大きな災害時に対応するものとして近年作られたものですので、新潟県内では弁護士も金融機関もまだまだ不慣れだと思いますが、これからの積極的な活用が望まれています。
被災者債務整理ガイドラインで再スタートを
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