2024.10.30

早わかり!フリーランス新法(弁護士 今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第90回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。


今回のテーマは、早わかり!フリーランス新法です。

その1.新法はどんな取引に適用される?

本年11月から「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が施行されます。

個人として業務委託を受けるフリーランス(事業者)と企業などの発注事業者の間の取引の適正化、フリーランスの就業環境の整備を図ることを目的とした新法となります。

新法が適用されるのは、①事業者間の、②業務委託取引であり、③受託者側の事業者が「特定受託事業者」(フリーランス)である場合です。

発注者が消費者である場合は適用外である一方、下請法のように当事者の資本金などは問われません。

業務委託には、物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供などが幅広く含まれます。

「特定受託事業者」とは、「個人であって、従業員を使用しないもの」と「法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」です。

従業員の使用の有無がポイントであり、代表者一人の会社も含まれるので注意が必要です。

その2.規制の概要は?

まず、発注事業者は、「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」等の「取引条件を書面等で明示」する必要があります。

発注事業者がフリーランスの場合も同様です。

次に、発注事業者が従業員を使用している場合には、「受領後60日以内の報酬期日の設定と支払」「募集情報の的確表示」「ハラスメント対策の体制整備」も求められるほか、さらに、一定期間以上の継続的業務委託をする場合に、以下の規制が加わります。

1か月以上の業務委託の場合は、フリーランスに責任がないのに、「不当な受領拒絶」不当に著しい低報酬の設定」「報酬額の事後減額」「事後返品」「一方的な業務内容変更」などをすることが禁止されます。

また、6か月以上の業務委託の場合は、「中途解除や不更新の際の30日前予告」「中途解除等の理由開示」育児介護等と業務の両立に対する配慮」も求められます。

違反があった場合には、公正取引委員会、中小企業庁及び厚労省に設置される窓口に申告することができ、違反事業者には報告徴収・立入検査、指導・助言・勧告の措置がなされ、勧告に従わない場合は命令と事業者名の公表、命令に従わない場合には50万円以下の罰金が科されます。

最後に一言。

フリーランスの語源は、中世ヨーロッパ時代に、傭兵団を離れて個人で雇われた傭兵のことを「Free(自由)」「Lance(槍)」と呼んだことが起源ということです。

新法は、フリーランスにとっての槍となるか?


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