2025.2.27

株式評価について会計検査院が物言い?(弁護士 今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第94回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。


今回のテーマは、株式評価について会計検査院が物言い?です。

その1.非上場株の評価方法に物言い!

最近、日本経済新聞の記事で「非上場株の相続税算定に『格差』 方式の違いで評価4倍」というものがありました(2月1日付電子版)。

どういう内容かというと、非上場株を相続する際の相続税の算定ルールについて、会計検査院が国税庁に見直しを求めているというものでした。

この記事のソースは、「令和5年度会計決算報告」の中の「相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価」という項目のようです。

現行の財産評価基本通達によれば、発行会社(評価会社)の規模及び株主の区分に応じて、原則的評価方式として、①類似業種比準方式(会社の業績等を表す3要素について類似業種と評価会社とを比べて、相対的に株式を評価)、②純資産価額方式(1株当たりの純資産価額により評価)、③併用方式(類似業種比準価額と純資産価額を併用する
ことにより評価)、同族株主以外の株主等が取得した株式については、特例的評価方式である配当還元方式(年配当金額を一定の率〔還元率=10%〕で割り戻すことにより計算)により評価されることになっています。

その2.会計検査院の調査の結果は?

会計検査院は、実際の申告から無作為抽出した1600件を対象に検査しました。

原則的評価方式については、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%となっており、類似業種比準方式及び併用方式による各評価額は、純資産価額方式による評価額に比べて相当程度低く算定され、1株当たりの評価額に相当のかい離が生じていました。

また、純資産価額に対する申告評価額の割合の分布状況の中央値は、大会社0.32倍、中会社0.50倍、小会社0.61倍と会社の規模が大きい区分ほど株式の評価額が相対的に低く算定される傾向があることが分かりました。

また、特例的評価方式(配当還元方式)については、還元率の10%は評価通達制定当時(昭和39年)の金利等を参考に設定されたものの、金利の水準が長期的に低下する中で見直されておらず、評価額が通達制定当時と比べて相対的に低くなっているおそれがあるということです。

最後に一言。

会計検査院は、異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式を取得した者間での株式の評価の公平性や社会経済の変化を考慮するなどして、評価制度の在り方について様々な視点からより適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要だと所見を述べています。記事によれば、対する国税庁の反応は…

~「まずは必要な実態把握を行う」…だそうです。~


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