2025.5.28
偽造品対応巡りAmazonに賠償命令(弁護士 今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。
今月のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、偽造品対応巡りAmazonに賠償命令です。
その1.悪貨が良貨を駆逐する事態が発生

本年4月、医療機器メーカーと販売会社が、アマゾンジャパンに対し約2億8千万円の損害賠償を求めた訴訟で東京地裁がアマゾン側に3500万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
原告の両社は、新型コロナウイルスの流行により需要が急増したパルスオキシメーターをアマゾンの「マーケットプレイス」上で販売していましたが、2021年8月頃から価格が10分の1ほどの偽造品が出回り始め、販売会社の売り上げが大きく減少しました。
アマゾンのマーケットプレイスには「相乗り出品」と呼ばれる仕組みがあり、同一商品が1つのページに集約されるため、正規品と偽造品が見分けられない状態になっていました。
販売会社は、何度もアマゾンに対して偽造品の対処を求め、商標権侵害も申告したものの、十分な対応はなされなかったようです。
それだけでなく、自動システムにより価格が平均から大きく外れる出品が停止される仕組みにより、販売会社の正規品が不当に高額と判断され、一部の商品ページが削除されてしまいました。
その2.裁判所の判断は?
東京地裁は、アマゾンの対応について、出品者から偽造品の具体的な被害申告があった際には調査や出品停止の義務があると判断し、これを怠った義務違反があると認定しました。
販売会社の出品を自動停止した措置についても、誤った適用との連絡を受けた場合には調査して出品停止措置を解除すべきだったのに怠ったとして義務違反を認めました。
一方、アマゾン側が調査したとしても偽造品と見抜けたとまでは認められず、自動停止措置そのものにも価格を誤って設定した出品を防止するために合理性があるとして、その点については賠償責任を認めませんでした。
そのうえで、商品ページ全体を削除した措置は、偽造品が出品されているかどうかを調査せずに削除した故意または少なくとも重過失があるとして賠償責任を認定しました。
また、アマゾン側は出品契約に「収入やデータ損失、間接的損害についていかなる者に対しても責任を負わない」旨の免責条項を設けていましたが、裁判所は出品者の権利を一方的に害する内容であるとして、有効性を否定しました。
最後に一言。
ネット通販における偽造品対策はとても重要です。
今回の判決は、消費者保護と取引環境の整備の観点からプラットフォーマーに適切な責任を認めた画期的なものと言えます。
~プラットフォーマーにも適切な法的責任を!~
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