2024.3.1
社外取締役のことはじめ(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。
第82回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、社外取締役のことはじめです。
その1.まずはじめに知っておいて欲しいこと
今年1月25日、金融庁、経済産業省、東京証券取引所が共同で「社外取締役のことはじめ」を公表しました。
社外取締役が果たすべき役割や機能などの基本的な内容を整理して周知することで質を向上させ、日本企業の中長期的な企業価値向上につなげるという狙いがあります。
「ことはじめ」は、新任や経験の浅い社外取締役に向けたA4のPDFで2頁のコンパクトなもので、すぐに読むことができます。
その内容は、「取締役会の役割・責務を知る」「社外取締役として自身に期待されている役割・機能を知る」「社外取締役としての5つの心得を知る」「自身の役割を果たすための必要な知識・スキルを知る」「就任先企業を知る」といった基本的な内容を整理するとともに、それに関連する「コーポレートガバナンス・コード」の原則や各種ガイドラインの該当箇所が記載され、QRコードで参照ガイドライン等へのリンクが貼られています。
活用方法としては、企業のコーポレートガバナンス担当者から社外取締役への新任時や再任時等に積極的に交付し、社外取締役との意見交換等にも活用してほしいということです。
その2.社外取締役の5つの心得とは?
ここでは、5つの心得を紹介します。
心得1「最も重要な役割は、経営の監督 中核は、経営陣の評価と指名・報酬」…「必要な場合には、社長・CEOの交代を主導することも含まれる」「過度に細かい業務執行に立ち入らない」「経営陣の適切なリスクテイクをサポートする」
心得2「社内のしがらみにとらわれず、会社の持続的成長に向けた経営戦略を考える」…「社内の常識にとらわれない視点」「中長期的な視点」「ESGやSDGsを含めた持続可能性を意識した経営の重要性」「各事業部門の利害にとらわれない全社レベルでの『全体最適』の視点」
心得3「業務執行から独立した立場から、経営陣に対して遠慮せずに発言・行動」
心得4「経営陣と、適度な緊張感・距離感を保ちつつ、信頼関係を築く」
心得5「会社と経営陣・支配株主等との利益相反を監督」
当たり前のようなことですが、昨今多発する企業不祥事をみると、“言うは易く行うは難し”です。
最後に一言。
上場企業の社外取締役に選任される人はそれ相応の経歴の人が多いと思われますが、あえて「ことはじめ」を公表したのは、社外取締役の平均的なレベルが高くはないという現状認識を踏まえてなのかもしれません。
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