相撲協会に労基署から物言いつく(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第81回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、相撲協会に労基署から物言いつくです。

その1.相撲協会、労基署の是正勧告を受ける。

昨年12月、日本相撲協会が向島労働基準監督署から職員の長時間労働等の労働基準法違反により是正勧告を受けたという報道がありました。

相撲協会は、昨年9月には、「職員によるコンプライアンス違反事案の処分について」と題して職員3名を懲戒処分した事実を公表しており、雑誌「相撲」1月号で全文が掲載されています。

職員に対する不適切な労務管理のほか、パワーハラスメントなどを理由として、事務局を統括するM主事を出勤停止1か月、H室長を降格とするなど職員計3人への懲戒処分を内容とするもので、時間外労働分の賃金が支払われていない職員が67人確認され、精算未了者がなお12人いることなども明らかにされました。

不適切な労務管理の具体的内容は、終業時刻後の時間外労働の申告は45分以上の場合のみ認め、15分単位で申告する独自のルールが制定されていた、地方場所で本来対象外のみなし労働時間制が適用されていた、振替休日の精算未了が多数あった、朝礼が始業時刻前に実施されていた、経理人事室の職員に限り打刻漏れの時間外手当がつかない取扱いがされていた、といったものです。

その2.ハラスメント・内部告発・実名公表

さらに、M主事は職員の基本給を同意なく2万円減額したり、職員4名に対し脅迫的な言動を行うなどのパワハラ行為に及んだほか、採用面接を受けていた職員に将来の妊娠・出産計画の説明を求めるなどしたとのことです。

H室長も職員5名に対し、人格を否定するような発言で叱責するなどのパワハラ行為に及んだほか、一部職員のサーバーアクセスを制限したということです。

なお、この懲戒処分に至った経緯は、昨年3月に職員有志を名乗る匿名の人物から、コンプライアンス委員長宛に告発文が郵送されたことから、同委員会で職員にアンケート調査をしたところ、具体的なハラスメント事実等の記載が認められたことから職員のヒアリングを実施して事案が発覚したということです。

M主事とH室長は実名が公表されており、H室長は自主退職したものの、M主事は1か月後に原職復帰したということです。

公益財団法人とはいえ懲戒処分を受けた職員の氏名を世間に公表するというのもあまり聞かない話です。

職場の雰囲気を想像するだけで寒気がしてきますね。

最後に一言。

報道によると、もともとは八角理事長を労基署庁舎に呼び出して是正勧告書を交付予定であったものの、協会側が難色を示したため、監督官が協会を訪問して交付したということです。

元横綱、監督官に呼び出され。


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