債権法改正~適用されるのは新法?旧法?(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
第34回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、債権法改正~適用されるのは新法?旧法?です。
その1.改正債権法が全面施行に!
いよいよ2020年4月から改正債権法が施行されます(保証意思宣明公正証書の作成は3月から)。
御社では、契約書ひな形の見直しなどはお済みでしょうか?
まだまだ間に合いますよ!
さて、「当然4月からは新法が適用されるんでしょ?」と思いがちですが、法改正には経過措置がつきものです。
ざっと確認しましょう。
まずは、基本的な考え方から。
施行日前に締結された契約や既発生又は発生原因の生じた債権債務には旧法が適用されます。
施行日前に基本契約が締結され、施行日以後に個別契約が締結された場合には、両契約の定め方や条項ごとの合理的意思解釈によって決まりますが、個別契約については新法が適用されることが多いでしょう。
法定利率は、民事年5%、商事年6%であったのが、一律当初年3%の変動制となりましたが、施行日前に利息が生じた場合や遅滞の責任を負った場合には旧法が適用されます。
その2.こんな場合はどうなるの?
施行日以後に契約が更新される場合、合意による更新の場合には新法が適用されます。
契約期間満了までに異議を述べなければ契約(期間)が更新される自動更新条項がある場合には、合意更新と評価されるというのが法務省担当者の解説です。
他方、借地借家法に基づく賃貸借の法定更新の場合には、更新後も旧法が適用されます。
施行日前に締結された保証債務については、更新後の主債務をも保証する趣旨であることが通常であることから、施行日以後に保証契約を合意更新したと評価される事情がなければ、引き続き旧法の適用となります(根保証も極度額不要)。
消滅時効も大きな改正点です。
時効の中断(更新)・停止(完成猶予)については、その事由が生じた時点によります。
消滅時効期間については、債権の発生時点又は契約等の場合その原因である法律行為の時点によります。
不法行為による20年の除斥期間を消滅時効期間にする改正と人の生命・身体の侵害による不法行為の損害賠償請求権の短期3年を5年とする改正については、施行日において未経過であれば新法が適用されます。
定型約款については、施行日前の契約についても新法が適用されます。
ただし、旧法の規定によって生じた効力は妨げられません。
最後に一言。
旧法は、施行日以後も適用対象が残っている限りは生き続け、徐々にフェイドアウトします。
借地借家法は1992年施行ですが、未だに旧借地法・借家法による賃貸借契約に出会うことがあります。
民法もまた然り。
旧法は死なず、ただ消え去るのみ。
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