債務者財産の情報が得やすくなる!(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所副理事長/新潟事務所所長/企業法務チームリーダー/2000年弁護士登録

1.依頼者にとってもっとも良い解決方法は何かを、依頼者の目線と、中立的な目線の両方に立って、依頼者とともに追求する。
2.解決のための道筋は、複数の選択肢を提供して、それぞれの長短を分かりやすく説明する。
3.連絡や問合わせには、できる限り迅速に対応する。仕事の質・正確性と量・スピードを両立できるように、 日々工夫する。
4.法分野はもとより、社会の動向には常に関心をもって、新しい情報を活用して幅広い分野に対応できるよう心がける。
5.依頼者はもとより、相手方も含めた関係者それぞれの人格を尊重して、事件を良い解決に導く。

 

第33回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

 

今回のテーマは、債務者財産の情報が得やすくなる!です。

 

その1.判決をとっても回収できない!

 

債権回収において最も困るのは、せっかく債権について確定判決や執行証書があっても、差押えの対象となる債務者の財産についての情報がないために現実に回収できないケースがままあることです。

もちろん、債務者が破産したり、事実上の倒産をしたような場合にはどのみち回収できないのですが、そこまで至ってないけれども任意の支払がないというような場合です。

 

例えば、預貯金を差し押さえるためには金融機関の支店名が、給与を差し押えるには勤務先がどこか、不動産を競売するにはどこに不動産があるかを特定しないといけません。

現状でも、確定判決があるような場合には、弁護士法に基づく照会により支店を特定せずに金融機関への残高照会の回答が得られる場合もありますが、これは金融機関のスタンスに依存します。

 

また、裁判所に債務者の財産開示申立をすることもできますが、債務者が不出頭や虚偽陳述の場合のペナルティは30万円以下の過料に過ぎず、しかも必ず過料になる運用でもありませんでした。

 

その2.改正民事執行法が4月に施行

これでは、あまりにも権利の実現ができないということで民事執行法が改正されたのです。

 

第1に、財産開示手続については、確定判決等だけでなく他の債務名義(仮執行宣言付判決や執行証書等)でも申し立てられるようになったほか、不出頭等に対しては6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰に強化されました。

 

第2に、第三者からの情報取得手続が新設されました。申立てにより、金融機関に預貯金等の情報を提供するよう裁判所から命令をしてもらえます。

また、財産開示手続を先行する必要がありますが、不動産について登記所に、勤務先について市町村や年金機構等に、それぞれ情報提供を命令する手続きも導入されました。

 

不動産についての施行はもう少し先になります。

 

勤務先については、養育費の支払や生命又は身体の侵害による損害賠償金の支払を内容とする債務名義を有している債権者に限られます。

やはり、給与の差押というのは、債務者の生活に対する影響が大きいからです。

 

最後に一言。

裁判所が支払を命じたにもかかわらず、従わない“逃げ得”が横行していましたが、法改正により変わってくるでしょう。

個人でも企業でも、支払困難な場合には、破産や民事再生による経済的更生を検討する機会が増えてくるかもしれません。

 

改めて感じること、それは、

情報こそが債権回収の最大の武器である。

 

ご注意

記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。

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