「脱・経営者保証」の流れ(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第73回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、「脱・経営者保証」の流れです。

その1.経営者保証改革プログラム

これまで、中小企業などが金融機関から融資を受ける際には、経営者である法人代表者が個人保証を求められることが一般的でした。

この「経営者保証」は、経営の規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で、創業や積極的な事業展開を躊躇させる、円滑な事業承継や早期の事業再生を阻害する要因となっているなどとも言われてきました。

これまでも「経営者保証ガイドライン」の活用促進等の取組が進められてきましたが、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を加速させるため、令和4年12月に、経済産業省・金融庁・財務省による連携の下、①スタートアップ・創業、②民間融資、③信用保証付融資、④中小企業のガバナンス、の4分野に重点的に取り組む「経営者保証
改革プログラム」
が策定されました。

その中の施策の一つとして、令和5年4月から、金融機関が経営者等と個人保証契約を締結する場合には、保証契約の必要性等に関し、事業者・保証人に対して個別具体的に「どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか」「どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか」についての説明をすることを求めるとともに、その結果等を記録した件数を金融庁に報告することを求めるものとされました。

その2.原則、経営者保証を求めない銀行も!

最近の日経新聞の記事によれば、令和5年4月以降に、北洋、八十二、紀陽、山陰合同、西京、阿波、福岡、十八親和、熊本、豊和、琉球の各銀行などが融資の際に原則、経営者保証を求めないことを表明したということです。

北国銀行は、令和4年秋に保証協会などを介さない「プロパー融資」で経営者保証を廃止しており、創業向け融資などで一部経営者保証を必要としていた基準も廃止したそうです。

広島銀行も、令和5年3月から融資基本方針を「適切に保証人徴求を行わなければならない」から「原則、保証人を求めないものとする」に見直し、本部に稟議をあげるのは「経営者保証をとらない場合」から「とる場合」に変更したということです。

地域経済を活性化するためにも起業や廃業しやすい環境が必要です。

新潟県内の2地銀を含めた各金融機関も、こうした脱・経営者保証の流れに乗ってもらえることを期待したいと思います。

最後に一言。

ドナルド・トランプ前アメリカ大統領は、複数回の破産経験があることで有名です。

日本が長期停滞から脱するためにも、挑戦や失敗がしやすい社会になってほしいものです。

失敗は、成功のもと。


一新総合法律事務所では、「契約書のリーガルチェック」「取引先とのトラブル」「事業承継」「消費者クレーム対応」「債権回収」「コンプライアンス」「労務問題」など、企業のお悩みに対応いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。