労働者協同組合をご存じですか?(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所副理事長/新潟事務所所長/企業法務チームリーダー/2000年弁護士登録

1.依頼者にとってもっとも良い解決方法は何かを、依頼者の目線と、中立的な目線の両方に立って、依頼者とともに追求する。
2.解決のための道筋は、複数の選択肢を提供して、それぞれの長短を分かりやすく説明する。
3.連絡や問合わせには、できる限り迅速に対応する。仕事の質・正確性と量・スピードを両立できるように、 日々工夫する。
4.法分野はもとより、社会の動向には常に関心をもって、新しい情報を活用して幅広い分野に対応できるよう心がける。
5.依頼者はもとより、相手方も含めた関係者それぞれの人格を尊重して、事件を良い解決に導く。

第71回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、労働者協同組合をご存じですか?です。

その1.労働者協同組合法が施行されました。

皆さんは、“労働者協同組合”という名前を聞いたことがありますでしょうか。

あまり聞いたことはないかもしれません。

令和4年10月に施行された労働者協同組合法で設立できるようになった新しいタイプの法人であり、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織です。

労働者協同組合は、1)組合員が出資すること、2)その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること、3)組合員が組合の行う事業に従事すること、という基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とします。

背景として、我が国では少子高齢化が進む中、人口の減少する地域において、介護、障害福祉、子育て支援、地域づくりなど幅広い分野で、多様なニーズがあり、これらの多様なニーズに応え、担い手となろうとする人々はNPOや企業組合といった法人格を利用し、あるいは任意団体として活動しているものの、これらは一長一短であることから、新しい制度が作られたものです。

その2.労働者協同組合の主な特色は?

主な特色としては、以下の点が挙げられます。

まず、労働者派遣事業を除くあらゆる事業が可能です。

介護・福祉関連 (訪問介護等)、子育て関連(学童保育等)、地域作り関連(農産物加工品販売所等の拠点整備等)など地域における多様な需要に応じた事業を実施できます。

許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。

設立には3人以上の発起人が必要です。

NPO法人(認証主義)や企業組合(認可主義)と異なり、法律に定めた要件を満し、登記をすれば法人格が付与されます(準則主義)。

組合員の責任は出資額が限度であり、組合員は一人一票の議決権と選挙権を持っています。

組合は組合員との間で労働契約を締結します。

業務従事者の要件として、総組合員の5分の4以上が従事しなければならないという5分の4要件と、従事する者の4分の3以上は組合員でなければならないという4分の3要件があります。

出資配当は認められません。

剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行います。

都道府県知事による監督を受けます。

最後に一言。

令和5年2月17日現在で、労働者協同組合は全国で計18法人が設立されているということです。

今後の活用が期待されます。

労働者協同組合で地域の課題に取り組もう!


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