不当な寄附勧誘をさせない!(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所副理事長/新潟事務所所長/企業法務チームリーダー/2000年弁護士登録

1.依頼者にとってもっとも良い解決方法は何かを、依頼者の目線と、中立的な目線の両方に立って、依頼者とともに追求する。
2.解決のための道筋は、複数の選択肢を提供して、それぞれの長短を分かりやすく説明する。
3.連絡や問合わせには、できる限り迅速に対応する。仕事の質・正確性と量・スピードを両立できるように、 日々工夫する。
4.法分野はもとより、社会の動向には常に関心をもって、新しい情報を活用して幅広い分野に対応できるよう心がける。
5.依頼者はもとより、相手方も含めた関係者それぞれの人格を尊重して、事件を良い解決に導く。

第69回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、不当な寄附勧誘をさせない!です。

その1.消費者契約法による霊感商法への対策

昨年12月、旧統一教会問題に端を発する霊感商法や不当な寄附勧誘についての対策立法が成立し、本年1月5日から一部が施行されました。

一つは、消費者契約法の改正です。消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、霊感等の特別な能力により、消費者又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、契約を締結することが必要不可欠と告げることにより、困惑し、契約をした場合には、これを取り消すことができるものとされました。

改正前よりも、親族に関すること、現在生じている不利益に関すること、不安を抱いていることに乗じた場合を含むなど、取り消しできる契約の範囲が広げられました。

また、霊感等の知見を用いた告知による勧誘に対する取消権につき、追認することができるときから3年(改正前は1年)、契約締結時から10年(改正前は5年)の間、行使可能とされました。

その2.不当な寄附勧誘への対策

もう一つは、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の制定です。

法人等が寄附の勧誘を行うに当たって、①自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないように、②寄附者やその配偶者・親族の生活の維持を困難にすることがないように、③勧誘する法人等を明らかにし、寄附される財産の使途を誤認させるおそれがないように、十分に配慮しなければならないとされました。

また、寄附の勧誘に際し、①不退去、②退去妨害、③勧誘をすることを告げず退去困難な場所へ同行、④威迫する言動を交え相談の連絡を妨害、⑤恋愛感情等に乗じ関係の破綻を告知、⑥霊感等による知見を用いた告知といった不当な勧誘行為で寄附者を困惑させてはならず、違反した場合の寄附の取消権と扶養親族等による債権者代位権の行使の特例が認められました。

借入れや現に居住している不動産・生活の維持に欠くことのできない事業用の資産で事業の継続に欠くことのできないものの処分により、寄附のための資金を調達することを要求することも禁止されました。

最後に一言。

今回の法律が人間の心の弱さにつけ込んだ金銭的搾取を防げるのかどうか、また、他宗教やNPO団体への思わぬ波及を懸念する声もありますが、一歩前進であると評価したいと思います。

まとめの駄洒落を一つ…

防ごうか、豪華なお布施


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