補助金トラブルあれこれ(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
第53回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、補助金トラブルあれこれです。
その1.補助金をもらう時のトラブル
コロナ禍に対する事業者救済のために、持続化給付金という制度が設けられましたが、それを悪用した不正受給が問題となったことは記憶に新しいところです。
筆者は、自治体関係の仕事をしていますが、補助金をめぐるトラブルというのは、頻繁ではなくても、案外とあるものです。
例えば、だいたいの補助金は自己資金が何割、補助金が何割などと決まっています。
しかし、自己資金がないとか、出したくないので補助金だけですべてを賄いたいと思う場合に不正が行われることがあります。
自己資金があるかのように銀行の口座に“見せ金”を置いて行政の確認後に引き出すとか、業者に“過大な金額の見積書”を出してもらい、実際に支払う額は補助金額の範囲内とするような手口が典型です。
こうした不正が事後に発覚した場合には、補助金返還を求められることは当然ですが、国費が入っている場合には、補助金適正化法違反により刑事罰に処せられることもあります。工事を請け負ったり、納入したりする業者からすれば、商売の機会になるかもしれませんが、情を知って不正に協力すると身を滅ぼすことになりかねません。
その2.補助金をもらった後のトラブル
もらいっきりで使途が問われないタイプの補助金ではなく、補助事業で建物や機械設備等を整備・購入するようなタイプの補助金の場合、基本的には、補助事業により整備・購入した不動産や動産については、一定期間中は処分してはならないという処分制限がかかっていることが多いです。
当然、交付決定の条件として知らされています。
ところが、こうした交付決定の条件を忘れてしまうと、補助の対象となった物件を処分したり、担保に入れることが起こったりします。
そうしたことが発覚すると、補助条件に違反したとして、補助金の返還を求められることになりかねません。
考えれば当たり前のことですが、公のお金を、特定の政策目的を達成するための手段として私の団体や個人に交付するわけですから、一定期間は補助金交付の目的とした事業の用に供してもらわなければ、あえて公金を出す意味などありません。
補助金を費やした物件を、行政の承認なくして売却して換金することは許されないのです。
そういうことから、補助金交付を受けた会社や個人が破産した場合に、補助対象物件の取扱いなどが問題になることもあります。
最後に一言。
国や自治体からお金をもらえる補助金制度について、うまく活用することは大切なことです。
ただ、その場合、往々にして自由の制約が伴うことを忘れないようにしましょう。
金も出すけど、口も出す!
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