性の多様性をめぐる最近の話題(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
今月のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、性の多様性をめぐる最近の話題です。
その1.性の多様性の尊重は当たり前に
最近は、LGBTという言葉も広く知られるようになりましたが、自分自身の知識不足を感じていたため、少し前に神谷・宗岡著『LGBTとハラスメント』(集英社新書)を読みました。
そこでは、「性」について4つの軸で考えることが紹介されています。
①法律上(出生届上)の性
②性自認(自分の性をどう認識しているか)
③性表現(服装・言葉など社会的にどうふるまうか)
④性的指向(自分の恋愛感情がどの性に向かうか)
の4つです。
ちなみに、トランスジェンダーというのは、性自認と法律上の性が異なることです。
昨年来のコロナ禍において台湾のデジタル担当大臣のオードリー・タン氏が注目を集めました。
トランスジェンダーゆえなのかどうかは分かりませんが、いわゆる天才でありつつも、社会の様々な人に対する思いやりのある言葉に強く共感するところがありました。
性の多様性を尊重するということは、様々な人のありのままの個性や才能を認め、誰にとっても生きやすい寛容な社会をつくることに結びつく考え方であるといえます。
我が国でもようやく浸透しつつある価値観といえるでしょう。
その2.過渡期ゆえの難しさ
とはいえ、いわゆる多数派の人たちからすれば、これまでと異なる価値観を含むことから、「自分の身近なこと」に影響が及ぶ場合、それを心から受け入れるのに時間がかかることは否めません。
最近では、オリンピックの重量挙げにトランスジェンダーの選手(男性として生まれ、男子選手として活躍後、30代でホルモン治療を受けて女性となり、女子選手に転向した)が女子選手として出場することが、他の選手から「不公平ではないか」との意見も出て物議を醸しています。
また、最近、東京高裁は、性同一性障害と診断され、女性として生活している経済産業省の50代の職員が、自分の部署のフロアでは女性用トイレの使用が認められず、2階以上離れたトイレを使うよう制限されているのは不当な差別だと国を訴えた裁判で、「経済産業省にはほかの職員の性的羞恥心や性的不安を考慮し、すべての職員にとって適切な職場環境にする責任があった」として、一審の東京地裁とは逆に、トイレの使用の制限は違法ではないと判断しました。
何が正解なのか、未だ確立していない状況といえます。
最後に一言。
様々な実践において試行錯誤が続くと思いますが、一人一人の人格を尊重することを基本に、よりよい方法を考えていくしかありません。
18世紀のヴォルテール@フランス曰く、
偏見は、判断を持たない意見である
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