2021.2.25
コロナ起因による個人の債務整理に新手法(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
第46回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、コロナ起因による個人の債務整理に新手法です。
その1.コロナにヒサロ?
今年1月に、新型コロナウイルス感染症の第3波による2回目の緊急事態宣言が首都圏その他に発出されました。
医療体制と経済の厳しい状態が続いています。
そうした中、失業や減収となった給与所得者や売上減少に見舞われた個人事業者で、借入れの返済が難しくなったというケースも少なからずあろうかと思われます。
個人の債務整理の手法としては、個人破産、個人再生、任意整理などが思い浮かぶところです。
今回のお話は、これらに加えて、「自然災害債務整理ガイドライン」(通称:被災ローン減免制度→さらに略して「ヒサロ」とも言うらしい)に「新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」(コロナ特則)ができ、昨年12月1日より運用が開始されたことを紹介します。
そもそも、ヒサロは東日本大震災後の二重ローン問題に対応するために制定された個人版私的整理ガイドラインが自然災害全般に対応するものとして発展し、平成28年4月から適用開始されたものです。
同年の熊本地震でクローズアップされましたが、これまでのところ、新潟で実戦投入されたケースは、筆者は寡聞にして知りません。
その2.どういう手続きなのか?
ヒサロ本則の特徴を列挙すると、
①準則型私的整理の一種であり、全対象債権者(金融機関等)の同意が必要
②信用情報機関に登録されない
③破産に比べて手元に残せる財産(自由財産)が多い
④公正な価額を支払うことで自宅を手元に残せる
⑤原則として保証人に履行が求められない
⑥弁護士その他の「登録支援専門家」の支援を無料で受けられる
といった点があります。
コロナ特則は、上記の本則をベースにしつつ、コロナに起因する直接・間接の影響により支払不能のおそれが生じた場合、基準日である昨年2月1日時点の既往債務のほか、昨年10月30日までのコロナ起因による金融債務を対象として、一定の基準に基づいて債務を減免する内容の弁済計画を全債権者の同意で成立させるための準則を定めています。
メインバンクへの着手申出を入口、簡易裁判所の特定調停手続を出口として、手続を中立・公正な「登録支援専門家」が支援します。
自由財産は破産法の考え方が参照されており、災害時ほどは残せませんが、破産を避け、「住宅資金特別条項」により住宅ローンを別枠で支払って自宅を残しうる点などにメリットがあります。
最後に一言。
まだ始まったばかりですが、金融機関は、コロナ特則がうまく活用できるケースでは、是非とも勧めていただきたいと思います。
「コロナ禍の個人債務整理にヒサロ・コロナ特則」
(このコラムは2021年2月22日発行のTSR情報に掲載されたものです。)
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