2025.8.27
企業価値担保権ってなに?(弁護士 今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。
第100回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、「企業価値担保権ってなに?」です。
その1.企業価値担保権のあらまし
“企業価値担保権”とは、聞き慣れない言葉かもしれませんが、令和6年6月に成立した「事業性融資の推進等に関する法律」により創設された制度で、令和8年5月25日から施行予定です。
この新しい法律は、事業者が、不動産担保や経営者保証等によらず、事業の実態や将来性に着目した融資を受けやすくなるよう、事業性融資の推進に関し、「基本理念」、「国の責務」、「事業性融資推進本部」、「企業価値担保権」、「認定事業性融資推進支援機関」等について定めています。
企業価値担保権における担保目的財産は、“総財産”であり、将来キャッシュフローを含む事業全体の価値となります。
借り手(債務者・設定者)は、株式会社・持分会社であり、自己の債務を担保するためにのみ設定できます。貸し手(被担保債権者)に制限はなく、銀行以外にファンド等も利用できます。
担保権者は、“企業価値担保権信託会社”(新設)となり、銀行等には簡易な手続で免許が交付されます。
対抗要件は、商業登記簿への登記となり、他の担保権との優劣は対抗要件具備の先後等となります。
借り手は、担保目的財産の処分は基本的に自由です(事業譲渡など通常の事業活動の範囲外の行為には担保権者の同意が必要)。
また、粉飾等があった場合を除き、経営者保証の利用が制限されます。
その2.担保権の実行方法は?
第1に、担保権の実行開始です。①債務の弁済が滞った際、担保権を実行する場合には、担保権者が裁判所に申立てをし、②裁判所が事業の経営等を担う管財人を選任し、③事業の継続等に必要な商取引債権や労働債権等を優先して弁済します。
第2に、事業譲渡です。
①管財人は、事業の経営等をしながら、スポンサーへ事業譲渡し、②事業譲渡の際には、労働組合や配当を受ける債権者から意見聴取を経て裁判所が許可をします。
第3に、配当です。
①管財人が事業譲渡の対価から、貸し手の金銭債権に充当します。
また、② 一般債権者等のために、事業譲渡の対価の一部を確保します。
このように新しい制度であり、事業評価の難しさ、手続きの複雑さ、認知度の低さなど課題も指摘されていますが、施行に向けて制度の周知、具体的な評価・管理手法の開発、実務運用体制の整備などが進む見込みです。
最後に一言。
企業価値担保権を活用した融資では、事業者とのコミュニケーションが深まる結果、1行取引が多くなるのではないかとも言われています。
今後の展開を注視したいと思います。
~銀行は、無形資産の目利きになれるか?~
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