六法全書あれこれ(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第65回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、六法全書あれこれです。

その1.六法全書とは?

弁護士というと、分厚い六法全書を机に置いて相談にのったり、書面を書いたりするようなイメージがあるのではないでしょうか?

実は、「六法全書」というのは、現在は有斐閣という法律専門の出版社が出している本の名前なのですが、法律の条文が載っている本(法令集)の一般名称としても使われます。

こうした法令集は、単に「六法」とも言ったりします。

ちなみに、「六法」という言葉は、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法を指して使う場合もあり、文脈によってどちらの意味か判断します。

大きな書店やネット書店を見ると、色んな種類の六法が売っています。

コンパクトなものから、枕のように分厚いものや、分冊ものまであります。

また、判例の要旨がついているものと、条文だけのものがあります。

汎用的なものから、学習用、試験用や特定の分野(倒産法、知財法、会社法)だけに特化したようなものもあります。

出版社も様々ですが、有斐閣(六法全書、判例六法、ポケット六法など)と三省堂(模範六法、基本六法、デイリー六法など)の2社がメジャーです。

私は、近年は東京都弁護士協同組合が出していた「携帯実務六法」という実務でよく使う条文だけのコンパクトな六法を愛用していましたが、残念ながら2021年版を最後に休刊となりました。

その2.紙の六法は生き残れるのか?

考えてみると、紙の六法を使うことはほとんどなくなっており、ずいぶん前から条文を確認するときは、政府のポータルサイトである「e-Gov」の法令検索(その前身である法令データ提供システム)を使用しています。

横書きであること、字が大きいこと、未施行法令の掲載もあり、大半はこれで用が足せます。

法律相談の時には、スマホで条文を検索することもあります。

また、判例は判例検索ソフトや、書籍・雑誌に引用されているものから探索するため、六法についている判例要旨を見る機会もありません。

個人的な好みとしては、電子書籍よりも紙の書籍を好んでいるのですが、六法についてはすっかり電子化してしまいました。

試験用や学校で指定される場合は別として、六法全書を買う必要も少なくなりました。

そうした「六法ばなれ」の実情を踏まえて、岩波書店は平成25年版で80余年の歴史を誇る六法から撤退しました。

今後の六法の動向が気になります。

最後に一言。

「論語読みの論語知らず」という言葉があります。

理屈のみを知って実践が伴わないことを指しますが、六法を読む際も法律の理屈ばかりに走らないよう、自戒したいものですね。

六法読みの六法知らず


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