ベトナム人誤認逮捕(弁護士:下山田聖)
10月20日、8月に新宿区のドラッグストアで万引きをしたとして、20代のベトナム人男性が逮捕されました。
警視庁は、ドラッグストアの防犯カメラに写っていた映像から、犯人が万引き後に近くのホテルに入っていったことが判明したため、同ホテルの関係者からも話を聞き、同ベトナム人男性を逮捕したとのことです。
しかし、同男性は一貫して容疑を否認したため、改めて防犯カメラの映像を確認したところ、同じホテルに勤める他のベトナム人男性であったことが分かり、逮捕翌日の21日に人違いであったベトナム人男性を釈放し、24日に真犯人を逮捕した模様です。
法律上、逮捕というのは、捜査機関の請求を受けた裁判官が審査をし、裁判官が要件を満たすと判断した場合に発付する逮捕状をもとに行われます(通常逮捕)。
逮捕の要件は、①「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と②「逮捕の必要」性があることをいいます。
②逮捕の必要性は、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ罪証を隠滅する虞」等を意味します。
あくまでも、被疑者が真犯人であるのかどうかというのは裁判所が判断する事項ですので、「逮捕=犯人」という図式は当てはまりません。
しかし、現行の法制度のもとでは、逮捕は最大3日間、逮捕に引き続く勾留がなされれば最大20日間は、留置施設に身柄が留め置かれることとなり、外の社会との断絶を余儀なくされます。
そのため、逮捕された段階で、親族や勤務先等に大きな影響を与えることになり、有罪無罪が決まっていない段階であっても、相当の不利益を受けてしまうことになります。
誤認逮捕ということになれば、逮捕された方は多大な不利益を受けることになる反面、真犯人を取り逃がしてしまうことにもなりかねません。
今回のケースは、ベトナム人男性が複数勤務していたこと、関係者からの目撃証言の聴き取りが不十分であったことから発生した事案のようです。
捜査機関に対しては、再発防止のために、逮捕段階であっても証拠の精査、分析を徹底してもいただく必要があるでしょう。
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