2020.8.7
少年法の見直し(弁護士:下山田聖)
少年法の見直し
少年法の見直しを検討している法制審議会が、8月6日、法改正に向けた要綱の原案をまとめたことが発表されました。
現在の少年法は、20歳に満たない者を「少年」とし、犯罪を起こした少年について、成人の場合とは異なる規律を置いています。
成人の場合には、起訴されれば刑事裁判を受けることになりますし、起訴するかどうかの判断は検察官に委ねられています。
これに対し、少年の場合には、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送られ、「審判」を受けるという扱いです。
これは、少年法が、少年の健全な育成に主眼を置き、犯罪に対して罰を与えるという側面よりも、少年の性格の矯正や生活環境の調整という側面を重視しているからと説明されます。
少年に対して、刑事裁判が妥当と判断されたときには、事件が家庭裁判所から再度検察官へと送られます。
これは「逆送」と呼ばれています。
線引きの難しさ
少年による凶悪犯罪が発生するたびに、少年法の厳罰化を求める意見が上がります。
また、少年法が適用される年齢を、現在の20歳未満よりも引き下げるべきではないかとの意見もあります。
今回の要綱原案では、少年法の適用年齢の引下げ自体は盛り込まれていませんが、18、19歳の少年が起こした事件については一度家庭裁判所に送るという現行の仕組みを維持しつつ、刑事裁判が相当として検察官に「逆送」とすべき事件の範囲を拡大したり、現行法では禁止されている推知報道(少年本人の特定につながる情報の報道)を起訴後には解除する等、成人に近い年齢の少年に関しては、成人と近い規律に服する内容になっています。
少年の可塑性は少年ごとに異なるはずですので、本来であれば個々の少年ごとに判断すべき事項だとは思いますが、そもそもその判断が容易ではなく、また、適用される法律が個々人ごとに異なってよいのかという問題もあります。
少年法に限らず、年齢によって線が引かれている規定はたくさんありますが、「線引き」というのは思うよりも難しいことなのかもしれません。