緊急事態宣言により従業員を休業させる場合に休業手当を支払う必要があるのか?(弁護士:五十嵐亮)

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、国や各都道府県知事より外出自粛や休業要請が出される事態となっています。

 

企業としては、従業員の感染防止の観点と事業継続の観点から、従業員を働かせるのか休業してもらうのかという判断が必要となります。

 

休業手当を支払わなければならない場合とは?

緊急事態宣言に関連して従業員を休業させる場合には、労働基準法26条に定める休業手当を支払う必要があるのでしょうか。

 

この点、「使用者の責に帰すべき事由のある休業」の場合には、休業手当を支払う必要があります。

 

「使用者の責に帰すべき事由のある休業」に該当するか否かの判断は、不可抗力か否かが問題となり、具体的には、

 

事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできないものであるかどうかが、

 

判断基準となります。

 

事例ごとの対応方法

原材料、資材、部品の調達に支障が出ため工場を一時停止したケース

このようなケースでは、当該原材料等が、他のルートで容易に調達できるのかどうかがポイントとなると考えられます。

他のルートで容易に調達できるにもかかわらず、他のルートによる調達を試みないままに工場へ一時停止し、休業した場合には、「使用者の責に帰すべき事由のある休業」と判断され、休業手当を支払う必要があると判断される可能性が高いでしょう。

 

緊急事態宣言に伴う休業要請により休業を行うケース

この場合でも、単に、緊急事態宣言に伴う休業要請が出されたという理由だけでは、休業手当の支払いを免れることはできないと考えられます。

 

すなわち、在宅ワークや時差出勤等の考え得る手段を検討してもなお休業することが避けられないという場合に休業手当の支払いをしなくてもよいということになります。

 

 

まとめ

事業主としては、難しい判断となりますが、刻一刻と状況が変化しているので、こまめに情報収集をしながら、事業継続のために適切な対応をとることが必要となります。

 

ご注意

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 五十嵐 亮

五十嵐 亮
(いからし りょう)

一新総合法律事務所
理事/弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:同志社大学法科大学院修了
長岡警察署被害者支援連絡協議会会長(令和2年~)、長岡商工会議所経営支援専門員などを歴任しています。
主な取扱分野は企業法務全般(労務・労働・労災事件、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)、交通事故、離婚。 特に労務問題に精通し、数多くの企業でのハラスメント研修講師、また、社会保険労務士を対象とした労務問題解説セミナーの講師を務めた実績があります。
著書に、『労働災害の法律実務(共著)』(ぎょうせい)、『公務員の人員整理問題・阿賀野市分阿賀野市分限免職事件―東京高判平27.11.4』(労働法律旬報No.1889)があります。