2022.11.4
デジタル社会と財産隠し(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
第66回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、デジタル社会と財産隠しです。
その1.暗号資産を隠して自己破産して逮捕!
今年9月、保有していた暗号資産を自己破産前に隠して債権者の債権回収を妨害しようとしたとして、警視庁が自営業の男性を破産法違反(詐欺破産)の疑いで逮捕したとの報道がありました。
報道によると、男性は昨年1月、国内の暗号資産取引所の口座に所有していたビットコインなど9種類の暗号資産(計約600万円相当)を15回にわたってアイルランドの取引所に送信して隠した疑いがあり、その2か月後の昨年3月、財産が現金数万円とパソコンなどしかないと申告して自己破産を申し立てたということです。
事件の背景としては、かつて都内の会社に勤めていた男性が、退職後も当時の顧客から仕事を請け負っていたとして元勤務先から訴訟を起こされ、約3千万円の賠償を命じられていたことから、財産を残して破産したかったということのようです。
こうした財産隠しというのは、以前から見られることですが、暗号資産を利用し、かつ、その金額がそれなりの額であったことに今の時代ならではの目新しさがあるといえます。
なお、暗号資産は破産管財人によって今年4月までに回収され、その価値は約1600万円まで値上がりしていたというオチがついています。
その2.デジタル資産を把握する難しさ
この報道記事を読んで、まず思ったのは、破産管財人がどうやって暗号資産の所在を把握したのか?ということです。
私が読んだ記事では、そこまで突っ込んで書いていませんでした。
では、破産管財人の立場で一般論として考えてみます。
まずは、預金通帳の取引履歴に取引所との出入金があったという可能性です。
預金通帳は破産裁判所も細かくチェックしており、そこから財産が判明することはよくあります。
もう一つは、管財人への転送郵便物からの発見というパターンです。
年末近くなると、年末調整や確定申告のために各種証明書などの郵便物が届きますね。
よくではありませんが、債権者から「こういう財産があるはずだ」との情報提供がある場合もあります。
あとは、税務署などの公租公課系の債権者も調査能力の高い債権者ですので、そこからの情報を端緒とする場合もあるのかもしれません。
いずれにせよ、預金通帳や郵便物を経由しない取引が増加している昨今では、管財人に与えられている情報入手権限の見直しも必要でしょう。
最後に一言。
破産することは、もちろん犯罪ではありませんが、意図的な財産隠しをすることは犯罪となります。
経済的な信用はいずれ回復しますが、人間的な信用まで失ってしまっては、その後の信用回復は容易ではありません。
天網恢々疎にして漏らさず
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