2022.7.26
残業代は1分単位で?(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
第63回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、残業代は1分単位で?です。
その1.大手企業が労働時間管理を1分単位に!
今年6月、ファミレス大手の「すかいらーくホールディングス」が、パートやアルバイトへの賃金の支払いを5分単位から1分単位に変更したうえで、過去2年分を遡り、5分未満の分の未払金16億円余りを従業員に支払うことにしたというニュースがありました。
これまで同社では労働時間を5分単位で管理し、5分未満は切り捨てていたものの、労働組合などから勤務管理の方法の見直しを求められ、見直すことになったということです。
労働基準法は、賃金全額払いの原則を定めていますが、同社はそれまでの勤務管理は法律に違反していないとの認識のもと「従業員との信頼関係を維持し、より働きやすい環境づくりに努めていきたい」とコメントしています。
また、松野官房長官は、同日午前の記者会見で「実際に労働した時間に対する賃金は、労働基準法により全額を支払わなければならず、労働時間の切り捨ては認められないこととされている。各企業においては、適切な労働時間の管理に基づく賃金の支払いを行っていただきたい」と述べており、それなりのインパクトがあったようです。
その2.時間をまるめるのはダメなのか?
通達では、残業代計算における端数の処理として、1か月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合には、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることも、常に労働者の不利益となるものではなく、事務の簡便を目的としたものと認められるため、労基法違反とは取り扱わないとしたものがあります。
しかし、現在はクラウド型の勤怠管理ソフトの導入などにより1分単位での打刻や集計も容易にできる環境となっており、あえて数字を丸める必要性は乏しくなってきたのも事実です。
経営者の中には、1分単位で残業代をつけるのであれば、途中で離席している時間やダベっている時間は引けないの?と思う方もおられるかもしれません。
この点、裁判例では、労働者が実作業に従事していない時間帯でも、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものとして労働時間に該当するとされています(あくまで程度問題かもしれませんが…)。
最後に一言。
私の事務所でもだいぶ前から1分単位で管理するようにしており、それで大きな支障はありません。
1分でも大事にして、集中して業務に取り組み、残業が少ないのが理想ですね。
塵も積もれば山となる
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