2020.8.24
破産者情報サイトに停止命令でる!(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
今月のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、破産者情報サイトに停止命令でる!です。
その1.個人情報保護委員会で初の命令
今年7月29日、個人情報保護委員会は、破産者の氏名や住所などの個人情報をインターネット上で公開している2事業者に対し、個人情報保護法違反を理由として、当該ウェブサイトを直ちに停止するよう命令しました。
問題のサイトは、インターネットの「官報」で公開されたものをプログラムが自動収集したものとみられていますが、運営者や連絡先の記載はなく、海外のサーバーを使用しているため運営者は特定されておらず、公示送達の方法で命令をしたということです。
2019年3月に同じような「破産者マップ」というのが問題となりました。
当時そのサイトを見ましたが、破産者の住所・氏名が地図上のピンで表示されるなどきわめて悪質なものでした。
もっとも、同サイトには運営者のメールアドレスが記載されており、個人情報保護委員会の行政指導を受けて運営者によって閉鎖されました。
今後、命令の対応期限(8月27日)までに具体的な対応がなされない場合には罰則適用を求めて刑事告発をする予定ということです。
その2.公開情報でも個人情報にあたる
破産手続開始決定の公告は破産法に基づき官報に掲載された公開情報ですが、「個人情報」とは、生存する個人に関する特定の個人を識別できるような情報等であり、公開の有無は問われません。
問題のサイトは、第1に、破産者の個人情報取得に際し、利用目的の通知又は公表を行わなかったこと、第2に、データベース化した個人データについて第三者提供の同意を得ないまま、ウェブサイトに掲載したことが法律違反とされました。
もっとも、第1の点については利用目的をサイトで公表する、第2の点についてはオプトアウト規定により個人情報保護委員会への届出を行うことで本人同意なしに合法的に掲載することができるのではないか、という疑問もなくはありません。
そもそも論として、破産者情報を官報情報検索サービス(有料版)で継続的に掲載しつづけることの当否も問われるところです。
運営者の特定が困難であることから、検索事業者に対する検索結果の削除要請も検討されているようです。
最後に一言。
破産者情報の官報公告の趣旨は、関係者に開始決定がなされた事実を知らせ、権利行使の機会を与え、第三者が不測の損害を受けることを防止することにあります。
他方で破産法の目的の一つである債務者の経済生活の再生の機会の確保という要請も軽視できません。
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