最近注目のジョブ型雇用とは?(弁護士:今井慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報(新潟県版)」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

 

今月のテーマ(2020/10/26発行 TSR情報)

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

 

今回のテーマは、最近注目のジョブ型雇用とは?です。

 

その1.同一労働同一賃金の射程外になる?

本年10月に、最高裁で非正規社員と正社員の待遇差が不合理かどうかを争う訴訟の判決がありました。

ザックリいえば、非正規の「手当や休暇の格差は不合理」「賞与・退職金なしは不合理ではない」と一見すると異なる方向性の判決だったのですが、ここでの主題はそこではありません。

私が注目したのは、日経新聞のある解説記事の内容です。

そこでは、非正規雇用を期間限定型+職務限定型の完全な「ジョブ型」にした場合に論及していました。

その場合、「同じ仕事」をする非正規社員と正規社員がいないことから、待遇格差を訴訟で争って是正することはできなくなるのではないか、という鋭い指摘です。

 

「ジョブ型」というのは、職務(ジョブ)を特定し、それを遂行できる人を採用する型です。

対義語は「メンバーシップ型」であり、職務を限定しないで採用する型です。

日本においては、特に総合職の新卒採用はメンバーシップ型雇用が一般的です。

中途採用はジョブ型の色合いが強まりますが、その場合でも職務の特定が厳密になされることは少ないでしょう。

 

その2.職務記述書とは?

 

欧米では、新卒採用も含めてジョブ型がとられているといわれています。

ジョブ型で必須のアイテムが職務記述書(ジョブディスクリプション)です。

弁護士の実務では未見ですが、ある本に欧米の職務記述書のサンプルが載っていました。

「職務記述書」の項目は、「職位、事業所、部門、場所」等の記載に始まり、「職務概要」「権限範囲」「主要な遂行及び結果責任」「組織内の地位」「関係」という項目が続きます。

仕事の具体的内容は、「主要な遂行及び結果責任」のところに具体的に列挙されています。

 

「務職明細」の項目は、必要な資格要件を記載しており、「教育」「経験」「技能」「専門的知識」「その他」という項目が並んでいます。
そして、業績評価については、職務記述書の責任事項について行われ、それにより処遇(とくに賃金)が決定されることになります。
とはいえ、ジョブ型の場合の職務給をどうやって決めるのか、相場がわからないかもしれません。

 

職務給についてのデータを提供する企業のサービスが開始されたという記事も見つけました。

 

 

最後に一言。

職能・年齢・家族構成に関係なく、仕事の内容自体に賃金を紐付ける職務給は、現代日本人の気質にも合いそうであり、今後、導入が広がるかもしれません。

ジョブ型社員曰く…

 

“ジョブさえやれば、ええんちゃう?(関西風)”

 

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。