2025.10.3

スポットワークの注意点(弁護士 今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第101回のテーマ

スポットワークの注意点

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。


今回のテーマは、「スポットワークの注意点」です。

その1.厚労省がリーフレットを公表

ここ最近、短時間・単発の就労を内容とする“スポットワーク”(スキマバイト)が市民権を獲得してきました。

とりわけ、スポットワークの雇用仲介事業者が提供する雇用仲介アプリを利用してマッチングや賃金の立替払を行うサービスの利用が拡大しています。


「タイミー」「シェアフル」「メルカリハロ」などが代表的なサービスです。

スマホ一つで自分の都合に合わせて働くことができる気軽さとともに、事業主にとっても一時的な人手不足が生じた場合に迅速に募集できるなど、双方にとって利便性が高い一方で、スポットワークをめぐるトラブルなども発生しているようです。

そうした背景から、今年7月、厚生労働省はスポットワークを利用する際の留意事項等を取りまとめた労働者及び使用者向けのリーフレットを作成して公表しました。

労働者向けと使用者向けがありますが、同じことをそれぞれの立場から説明したものであり、「労働契約締結時」「仕事の中止・休業」「賃金・労働時間」「その他」の内容となっています。

その2.リーフレットのポイントは?

まず、労働契約の成立時期については、スポットワークでは、アプリを用いて、事業主が掲載した求人に労働者が応募し、面接等を経ることなく、短時間に求人と応募がマッチングすることが一般的なので、面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がない限り、求人に労働者が応募した時点で労働契約が成立すると一般的には考えられるとしています。

関連して、キャンセルポリシーについても、当該事由が合理的であることや、労働者のみに不利な内容にならないように留意を求めています。

また、労働契約成立後に事業主の都合で休業又は仕事の早上がりをさせることになった場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるので、労働者に対し、所定支払日までに休業手当を支払う必要があることが記されています。

さらに、労働者から予定していた労働時間と異なる実際の労働時間による修正の承認申請がなされた場合は、事業主は、予定された労働時間に基づき勤務した賃金は遅滞なく支払うとともに、予定の労働時間と異なる時間については、速やかに確認し、労働時間を確定させるよう求めています。

最後に一言。

雇用仲介アプリによるサービスは、あたかもスポット的な労働者派遣のように勘違いしてしまいがちですが、あくまで職業紹介事業であり、すべての雇用責任は紹介先企業にあることを忘れないようにしてください。

~スキマバイトが法のスキマに落ちないように~


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