2025.8.19
◆2024年11月施行◆フリーランス法のポイント

フリーランス法の適用対象
2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」( 通称:フリーランス法)が施行されました。
フリーランス法では、主に取引の適正化と就業環境の整備について、フリーランスに業務を委託する側の事業者(特定業務委託事業者)が守るべきルールが定められています。
フリーランス法の適用にあたっては、業務委託の相手方が「特定受託事業者」(以下「フリーランス」)に該当すること、すなわち個人事業主の場合は従業員を雇用していないこと、法人の場合は役員が1名のみで従業員を雇用していないことが要件となります。
そのため、実務上の対応としては、既存の業務委託先がこれらの要件に該当するかどうかを確認するとともに、新たに業務委託を行う場合は、契約締結時に業務委託先がこれらの要件に該当するかどうかを確認することが重要になります。
取引の適正化~フリーランスとの公正な取引ルール~
フリーランスとの取引の適正化について、経営者が押さえておくべきポイントは以下の3点です。
【1】給付内容等の明示義務
特定業務委託事業者は、フリーランスに対して業務委託を行った場合、業務内容、報酬金額、支払期日などを、直ちに書面や電子メール等で通知しなければなりません(いわゆる3条通知)。
未通知によるトラブルを防ぐため、契約書のひな形や通知文のフォーマットをあらかじめ用意しておくとよいでしょう。
【2】報酬支払に関する義務
フリーランスに業務を委託した場合、報酬は、納品または役務提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間に支払う必要があります。
支払期日は「〇月〇日」と具体的に特定しなければなりません。
再委託の場合は、元委託の支払期日から30日以内に設定することが求められます。
フリーランスに対する報酬の支払いが、上記ルールに沿ってなされているかどうか、社内の取扱いを確認しておく必要があります。
【3】不当な取扱いの禁止
1か月以上継続する業務委託を行う場合について、理由なく給付の受領を拒否する、報酬を減額する、物品の購入やサービス利用を強制するなど、フリーランスに対する不当な取扱いは禁止されます。
経営者がこのような不当な取扱いを主導することがあってはならないのはもちろんですが、現場の判断不当な取扱いが行われていないか、チェックすることも重要になります。
就業環境の整備~フリーランスにも配慮と保護を~
フリーランス法では、フリーランスの就業環境の整備にも重点が置かれており、業務を委託する側の事業者には以下の義務が課せられています。
【1】募集情報の的確な表示
フリーランスの募集にあたっては、仕事内容、報酬、契約解除の条件などについて正確かつ最新の情報を表示し、虚偽や誤解を招く表現を避けることが求められます。
労働者募集との混同も厳禁です。
紙面やインターネット等の各種媒体でフリーランスの募集広告を行う場合には、広告の内容が上記ルールに沿っているかどうかを確認する必要があるでしょう。
【2】妊娠・出産・育児・介護への配慮
6か月以上の継続契約があるフリーランスから、育児や介護と両立した働き方の希望が出された場合には、必要な配慮を行う義務があります(6ヶ月以上の継続契約に該当しない場合でも、努力義務として配慮が求められます)。
具体的には、申出内容の把握、実施可能な選択肢の検討、配慮内容の通知と実施、不実施の場合の説明などの対応が必要になります。
また、配慮の申出を理由とした契約解除などの不利益な取扱いは禁止されます。
【3】ハラスメント防止
フリーランスに対するセクハラ、パワハラ、マタハラ等に対応するため、ハラスメント禁止方針の策定と周知、相談窓口の設置、迅速な対応体制の整備などが求められます。
契約交渉中の段階においても、同様の配慮が求められます。
従業員向けにすでにハラスメント対策をしている場合には、社内の相談窓口をフリーランスも利用可能とするなど、ハラスメント対策をフリーランスにも拡張する形で対応すると良いでしょう。
おわりに
フリーランス法に違反する行為があった場合、中小企業庁や公正取引委員会に申出を行うことができます。違反行為は、行政指導・勧告・命令の対象となり、命令違反は刑事罰(50万円以下の罰金)の対象となります。
このようにフリーランス法は、下請法と異なり、命令や刑事罰にまで踏み込んでいる点が特徴の一つです。
法的なリスクを避けるためには、現場任せにせず、経営者自らが率先してコンプライアンス体制を整備していくことが求められます。
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2025年6月5日号(vol.304)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。