2025.7.30
トランプ大統領VS法律事務所(弁護士 今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。
第99回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、「トランプ大統領VS法律事務所」です。
その1.連邦裁判所への「出禁」命令

第2次トランプ政権による一方的な関税引き上げや追加関税への対応に世界が振り回され、日本経済への影響も懸念されている昨今ですが、トランプ政権の政策がアメリカ国内でも様々な波紋を呼んでいることは周知のとおりです。
その中の一つとして、自身に対する疑惑調査や捜査に関与した大手法律事務所や弁護士に対する攻撃的措置があります。
日経新聞の報道によれば、トランプ氏は2月から4月にかけ、6つの大手法律事務所を制裁する大統領令に署名して、所属弁護士らが連邦裁判所を含む連邦政府の建物に立ち入ることを禁じ、機密情報を扱う資格を停止したということです。
その他にも、将来の政府雇用の停止、政府契約の解除、さらにはその事務所と取引する他企業の連邦契約も妨害するなどしているという報道も見られます。
こうした動きの背景には、それらの法律事務所の民主党との関係、不法移民、LGBTQ支援などの活動に対する政権の不満があったとされていますが、裁判所への「出禁」措置などをされたら、法律事務所としては、商売あがったりということになりますね。
その2.法律事務所側の対応は?
この前例のない法律事務所攻撃への対応をめぐり、ある事務所は退役軍人支援といった政権の方針のためのプロボノ(無償)活動を申し出て大統領令の撤回を受け、これに追随する事務所もありました。
もっとも、政権と取引(ディール)をした事務所では顧客や人材の流出という副作用も生じているとのことです。
他方で、4つの事務所は訴訟で対抗し、大統領令は言論の自由を保障した合衆国憲法修正第1条に反するなどと憲法違反を主張し、法廷で争いました。
連邦地裁はこれらの事務所の訴えを認め、大統領令を違憲と判断したものの、政権は控訴せず、全体へ波及する判決を避けたとされています。
一方、政権に対抗できるだけの資金力がない中小の事務所への萎縮効果が生じており、米メディアによると、既に移民問題関連の案件を扱うのを控える事務所が出ているそうです。
こうした状況を受けて米国法曹協会(ABA)は6月、政権による弁護士や法律事務所全体への威嚇行為を違憲とし、差し止めを求めて首都ワシントンの連邦地裁に訴えを起こしました。
最後に一言。
司法先進国であるアメリカでの動きをみると、同じ弁護士業務を行う者としては、改めて、弁護士の独立性と法の支配を守る気概が試されていると感じます。
~弁護士の独立なくして、国民の人権保障なし~
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