2026.10.29

どうなる?非上場株式の評価見直し(弁護士 今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

非上場株式の評価の見直し

第114回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。


今回のテーマは、「どうなる?非上場株式の評価見直し」です。

その1.国税庁が「残余利益方式」を提案

非上場株式の相続税・贈与税における評価額は、財産評価基本通達により、会社規模に応じて「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」の組合せなどで算出されてきました。

会計検査院からの類似業種比準方式では規模の大きい会社ほど評価額が低くなり、公平性が確保されていないとの指摘を受け、国税庁は本年4月に有識者会議を立ち上げ、そこで見直しが議論されています。


8月20日の第5回会議で国税庁が示したたたき台は、①会社規模別の区分を廃止して評価方式を一本化、②類似業種比準方式は存置困難、③収益力を重視するインカムアプローチを主軸、というものです。

具体的には、簿価純資産に数年分(5年分が軸)の超過収益(残余利益)を加減する「残余利益方式」で、赤字・低収益の会社は評価額が簿価純資産を下回ります。

役員退職金等による利益操作を封じるため非経常的な損益を除いた「正常利益」で評価し、完全支配関係にあるグループは全体で評価するなど、節税スキーム対策も盛り込まれました。

2028年1月以降の相続からの適用が目指されています。

その2.日商・中企庁は猛反発、政治も動く

これに対し、日本商工会議所は、第5回会議に意見書を出し、試算では評価額が現行の2倍から5倍近くになり、相続税が数千万円から数億円規模で増える例もある、利益が積み上がるほど評価額も上がり続けるとして、多くの中小企業の事業承継が崩壊するのではと強く懸念しています。


経済産業省・中小企業庁も9月16日の第6回会議に意見書を出し、資産規模が大きく収益性の高い企業ほど評価額が著しく増え、成長投資を抑制させるとして、政府の「稼ぐ力」強化・賃上げの方針に逆行すると批判したうえで、拙速を避けて業種・類型別の試算・検証を行うよう求めました。

他方、国税庁は同会議で、現行ルールに近い調整係数を掛ければ中小企業の5割超で評価額が下がるとの試算を示しています。


政治の側では、自民党税制調査会が10月6日に2027年度税制改正の議論に着手し、この見直しを重要課題に位置付けました。

小野寺五典会長は中小企業が懸念を抱く課題との認識を示し、片山さつき財務大臣も同日の会見で事業承継税制と合わせて検討する考えを示しています。

最後に一言。

最後に一言。

評価の適正化と円滑な事業承継をどう両立させるか、今後議論が山場を迎えそうです。

いずれにしても現行のルールが変更となる場合には、それを前提に自社株対策を組んできた会社は、何らかの見直しを余儀なくされそうです。

~自社株は、ルールが変われば、値も変わる。~

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。


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