2026.5.28
弁護士の預り金口座は守られるか?(弁護士 今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。
第109回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、「弁護士の預り金口座は守られるか?」です。
その1.預り金口座が差し押さえられた!
今年2月に衆議院の総選挙がありましたが、その際、最高裁判所裁判官の国民審査も併せて実施されました。
審査を受ける裁判官については、公報で経歴や担当した判決などが掲載されますが、ある裁判官についての記載の中で、弁護士の預り金口座についての最近の最高裁判決(第三小法廷令和8年1月20日判決)に触れられていて、気になったので調べてみました。
どういう事案かというと、家事審判で配偶者に対する婚姻費用(別居中の生活費など)の支払いを命じられた弁護士が、配偶者から強制執行を受け、自らが業務上管理していた「預り金口座」を差し押さえられたという、レアなケースです。
ところで、弁護士の仕事をしていると、依頼者からお金を預かることがままあります。
例えば、相手方から和解金の入金を受け、依頼者のために一時的に預かったりします。
これを「預り金」といい、弁護士は自分自身のお金と別に、専用の口座で厳格に分けて管理することが義務づけられています。
日弁連の規程により、目的外使用は禁止され、入出金の記録・保存や依頼者への報告も求められています。
弁護士の意識では、預り金口座のお金は“依頼者のもの”という感覚です。
その2.最高裁の判断は?
この事案で、弁護士側は、「預り金は信託財産にあたるため、差し押さえはできない」と主張しました。
信託財産とは、受託者(ここでは弁護士)が委託者(依頼者)のために管理する財産であり、受託者自身の債務のために差し押さえることはできません。
原審の東京高裁は、預り金が固有財産と分別管理されていれば信託契約の成立を認めてよいとして、弁護士側の主張を認めました。
しかし、最高裁はこの判断を否定しました。
信託契約が成立したというためには、「信託の目的についての合意」が具体的に主張されていなければならず、単に分別管理がされているだけでは不十分だというのです。
また、信託財産に該当するかどうかの判断時点についても、差押え時点ではなく、事実審の口頭弁論終結時を基準とすべきと判断しました。
そこで、最高裁は原判決を破棄し、改めて審理するよう東京高裁へ差し戻しています。
最後に一言。
最後に一言。
現時点ではこの事案の最終的な結論は出ていません。
差戻審では、依頼者との信託契約の具体的内容や、その後の契約の終了の有無などが改めて審理される予定です。
依頼者との秘密保持義務との兼ね合いも注目されます。
それにしても、預り金口座を差し押さえられるのは、弁護士にとって想定外だったかもしれません。
~預り金、配偶者から狙われる~
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