動産売買の先取特権を知ってますか?(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所副理事長/新潟事務所所長/企業法務チームリーダー/2000年弁護士登録

1.依頼者にとってもっとも良い解決方法は何かを、依頼者の目線と、中立的な目線の両方に立って、依頼者とともに追求する。
2.解決のための道筋は、複数の選択肢を提供して、それぞれの長短を分かりやすく説明する。
3.連絡や問合わせには、できる限り迅速に対応する。仕事の質・正確性と量・スピードを両立できるように、 日々工夫する。
4.法分野はもとより、社会の動向には常に関心をもって、新しい情報を活用して幅広い分野に対応できるよう心がける。
5.依頼者はもとより、相手方も含めた関係者それぞれの人格を尊重して、事件を良い解決に導く。

第68回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、動産売買の先取特権を知ってますか?です。

その1.商品の販売先が倒産してしまった!

倒産情報を見ると、取引先の倒産の一報が入った債権者(担当者)の気持ちを考えることがあります。

おそらく「なんとか少しでも回収できないか」という気持ちと、「倒産した以上はどうしようもない」という気持ちが、様々な割合で去来するのではないでしょうか。

今回は、回収したいという気持ちに応えられるかもしれない、動産売買の先取特権(どうさんばいばいのさきどりとっけん)というものを説明します。

実は、動産の販売者には、販売した動産から動産の代金を他の債権者に優先して弁済を受けることができる担保権が民法で認められており、これが動産売買の先取特権なのです。

動産の譲渡担保権のように、当事者間の担保設定行為や対抗要件(占有の移転など)が要求されず、法律上当然に発生することがミソです。

また、破産法上は別除権(べつじょけん)となり、破産管財人に対しても主張できるのもナイスです。

もっとも、破産管財人に動産売買の先取特権を行使したいと伝えても、管財人に協力する義務はないので、動産をさっさと任意売却されてしまうことも往々にしてあります。 債権者としては、先取特権を有することを証明する文書を裁判所に提出し、裁判所の許可を得て動産競売をする必要が出てきます。

その2.動産が既に転売されていたら?

それでは、動産が第三者に転売されていた場合はどうでしょうか。

もはや動産自体を差し押えることはできません。

転売先からすれば、せっかく買ったものを持って行かれる道理はありません。

また、既に転売先が動産の代金を支払済みの場合も、もはや差し押さえるべきものはないので、債権者としてはいかんともできません。

ただ、転売先がまだ代金を支払っていない場合には、転売代金債権について物上代位権(ぶつじょうだいいけん)を行使できる可能性があります。

条件が揃っている場合には、裁判所に先取特権の存在を証明する証拠をつけて債権差押えの申立てをします。

私自身はまだこの手続きをしたことはありませんが、動産ごとに販売と転売の証拠を揃えて申立書を整理する必要があり、裁判所の審査も一般の債権差押えよりは時間がかかるようです。

しかし、これで回収できれば、気分は最高でしょうね。

最後に一言。

今回紹介した動産売買の先取特権がうまくはまる場合は多くないかもしれません。

ただ、こういう方法もあるということを知っていれば、“ワンチャンあるかも”という話でした。

知識は力なり by フランシス・ベーコン


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