2020.3.11
コロナウィルスによるマスク不足が解消されるか?マスク転売が禁止される政令改正について(弁護士:下山田 聖)
コロナウィルスに翻弄される日本の現状
昨今、新型コロナウイルスの感染者が日本国内でも続出しています。
これに伴い、マスクやアルコール消毒液の品薄状態が続いたり、トイレットペーパーが買い占められたりするなど、通常とは異なった消費行動が起きてきます。
品薄状態を利用した抱き合わせ商法と独占禁止法について
マスクの販売については、品薄状態を利用して、一部のドラッグストアがマスクと高額の栄養ドリンク等をセットにして販売したところ、公正取引委員会が、このような販売方法は独占禁止法で禁止する不公正な取引方法(抱き合わせ販売等)につながるおそれがあるとして、これをしないようにという要請を発しました。
商品の組合せの決定は、基本的に販売者が自由に決められる事項であるはずですが、抱き合わせ販売はなぜ独禁法上違法とされるのでしょうか。
独禁法は、事業者の自由な経済活動に一定の拘束をかけることで、不当な対価設定や技術の独占を防止し、一般消費者の利益を確保することを目的としています。
たとえば、複数の事業者が、価格を一定水準に設定してしまうと、一般消費者はそれを下回る価格で商品が購入できなくなります(価格カルテル)。
商品等の価格というのは、原理的には、需要と供給のバランスによって市場の中で適正が価格が決定されるものですが、価格カルテルはこれを妨げるものです。
このような行為により一般消費者が不利益を受けないよう、独禁法は事業者の行為に制限を設けているのです。
一般消費者の立場から抱き合わせ商法を考えてみると、「必要な商品(マスク)を買うためには、不要な商品(高額栄養ドリンク等)を買わなければならない」ということになります。
もちろん、無理やり購入させられているわけではないのですが、マスクが品薄状態であることを考えると、セット販売されている以上、高額栄養ドリンク等を購入しなければ、事実上マスクを購入することはできません。
一般消費者は、「マスクだけ」を購入するという選択の余地がなく、商品を選択する自由がありません。
独禁法は、このような販売方法は、不公正な競争手段であると位置づけ、公正な競争を阻害するものとして規制をしているのです。
かつては、人気ゲームソフト(ドラゴンクエストⅣ)と不人気ゲームソフトを抱き合わせて販売したことについて、独禁法違反が問われた事例もあります。
マスク転売禁止を定めた政令に違反するとどうなるか?
マスクの個人レベルの転売については、これまでは明確な法規制はありませんでした。
しかし、令和2年3月11日に、国民生活安定緊急措置法の改正政令を公布し、令和2年3月15日から施行される予定です。
これにより、小売事業者から購入したマスクを、他の消費者に対して、購入価格を超える価格で転売することが違法になります。
具体的には、ドラッグストアやネットショップで購入したマスクを転売して利益を得る行為については、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます。
まとめ
マスク転売違法化の根拠となった国民生活安定緊急措置法は、1973年の第1次オイルショックのときにトイレットペーパー等が買い占められたことから、これに対する法規制として整備された法律です。
今回の新型コロナウイルスによる混乱も、感染者の拡大のみならず物資の供給や経済活動の停滞を引き起こしています。
事態が早期に終息することを祈るばかりです。
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