2023.11.1
AI契約書審査と弁護士法(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。
第78回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、AI契約書審査と弁護士法です。
その1.法務省がガイドラインを公表
今年8月、法務省から「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」という文書が公表されました。
弁護士法72条本文は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」とし、いわゆる“非弁行為”を禁止しています。
そして、これに違反した場合には2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処するものとされています。
近時、複数のベンチャー企業からAIを用いた契約書審査サービスが有償で提供されており、大企業や法律事務所などで普及しつつあります。
従来、これらのAI等を用いた“リーガルテック”のサービスが弁護士法72条に違反することがないかどうかが明確ではなかったため、法務省は、弁護士法72条とリーガルテックとの関係の予測可能性を高めるため、上記のガイドラインを作成・公表したという経緯になります。
その2.ガイドラインの概要
ガイドラインは、ポイントごとに判断の考慮要素や、通常該当しない例と該当し得る例を示しています。
①「報酬を得る目的」にあたるかは、サービスの運営形態、支払われる金銭の性質や支払目的等を考慮し、利益とサービス提供との間に対価関係が認められるか否かで判断します。
②「その他一般の法律事件」にあたるかは、個別の事案ごとに、契約の目的、当事者の関係、経緯や背景事情等を考慮し、法律上の権利関係に関し争いがあり、あるいは疑義を有するか否かで判断します。
③「鑑定…その他の法律事務」にあたるかは、作成業務支援、審査業務支援、管理業務支援といったサービスの機能と表示内容によって判断されます。
④ サービスの利用者として、①~③にかかわらず、弁護士が自ら精査し、必要に応じ修正する方法で使用する場合は違反しないとされました。
最後に一言。
本ガイドラインにより、各リーガルテック企業も、提供サービスの適法性を確保することがしやすくなりました。
私の所属事務所でもAI契約書審査を一部導入していますが、人間の判断の補助として上手に活用したいところです。
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