2026.7.29

求職者の経歴調査どこまでOK?(弁護士 今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第110回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。


今回のテーマは、「求職者の経歴調査どこまでOK?」です。

その1.広がりつつある経歴調査

近年、中途採用の拡大に伴い、採用候補者の経歴や勤務実績を確認する「バックグラウンドチェック」「リファレンスチェック」を導入する企業が大企業を中心に増えているようです。

採用には多くの時間や費用がかかるため、経歴詐称や重大なコンプライアンス上の問題を未然に防ぎたいという企業のニーズが高まっているためです。

この流れを後押ししたのが、いわゆるアクセンチュア事件(東京高裁令和6年12月17日判決)です。

この事件では、中途採用予定者についてバックグラウンドチェックを含む経歴調査により履歴書の内容と異なる経歴が判明し、会社が内定を取り消したことの有効性が争われました。

東京高裁は、単に履歴書等の書類に虚偽の事実を記載したり、真実を秘匿した事実が判明したのみならず、その結果、労働力の資質、能力を客観的合理的に見て誤認し、企業の秩序維持に支障をきたすおそれがあるときや、企業の運営に当たり円滑な人間関係、相互信頼関係を維持できる性格を欠き企業内にとどめおくことができないほどの不正義が認められる場合には、内定取消しが認められると判断した原審の判決を是認しました。

その2.「必要な範囲」と「本人同意」が基本

経歴調査では、個人情報保護法と職業安定法への配慮が欠かせません。

前職への照会や第三者から情報を収集する場合には、調査の目的や内容を応募者に十分説明し、原則として本人の同意を得ることが重要です。

犯罪歴などの要配慮個人情報についても、本人の同意が必要となります。

さらに、厚生労働省の指針では、人種や思想・信条、社会的身分、本籍、家族の状況など、業務との関連性が乏しい情報を収集することは適切ではないとされています。

近年はSNSを確認する企業もありますが、公開情報であっても内容の真偽を慎重に見極める必要があり、非公開アカウントを不適切な方法で閲覧したり、その情報を安易に採否の判断材料とするのは避けるべきです。

採用の実務では、卒業証明書や資格証明書などの客観的な資料や職務経歴書による確認を基本とし、必要に応じて本人の同意を得たうえで経歴調査の活用を検討します。

採用の適正さと応募者の権利保護を両立させるためにも、「必要な範囲」と「本人同意」という原則を踏まえた、適法かつ公正な経歴調査を心掛けることが重要です。

最後に一言。

最後に一言。

人材採用が難しくなっている地方や中小企業において、求職者の同意を得て経歴調査まで行うことができる事業者は限られる気もしますが、もし行う場合はルールを守ってください。

~法を守って人を選ぶ~


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