2025.12.25

マンション関係法の改正(弁護士 今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第104回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。


今回のテーマは、「マンション関係法の改正」です。

その1.2つの老い

本年5月にマンション関係法の改正が成立しました。

改正法の正式名称は長いので省略しますが、建物区分所有法、被災区分所有法、マンション管理適正化法、マンション建替円滑化法(いずれも略称)を一括して改正するものです。


改正法は、マンションを始めとする区分所有建物が高経年化し、居住者も高齢化する「2つの老い」が進行している社会経済情勢等に鑑み、マンションの新築から再生までのライフサイクル全体を見通して、その管理及び再生を円滑化するため、区分所有法制等の見直しを行っています。


第1に、“管理の円滑化”です。

新築時からの管理計画の引継ぎができるよう、分譲事業者が管理計画を策定し、管理組合へ引き継ぐ仕組みが導入されました。

また、管理業者が管理組合の管理者を兼ねて工事等の発注者となる場合、利益相反の懸念があるため、自己取引等について区分所有者への事前説明を義務化しています。

さらに、集会決議が円滑に行えるよう、区分所有権の処分を伴わない事項(修繕等)の決議は、現行の全区分所有権の多数決から出席者の多数決とし、裁判所が認定した所在不明者を決議の母数から除外する制度を創設しました。

管理不全の専有部分や共用部分等を裁判所選任の管理人が管理できる制度も創設されました。

その2.再生の円滑化

第2に、“再生の円滑化”です。

新たな再生手法として、建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、取壊し等を、建替えと同様に多数決(4/5、条件付きで緩和)で可能とし、決議に対応した組合設立、権利変換計画、分配金取得計画等
の事業手続を整備しました。

また、隣接地や底地の所有権等について、建替後のマンションの区分所有権への変換も可能としました。

また、耐震性不足等で建替等をする場合の容積率や高さ制限の特例を認める仕組みも整備されました。


第3に、地方公共団体の取組の充実として、外壁剥落等の危険がある場合、報告徴収・助言指導・勧告・あっせん等の措置をとれるようにしました。

また、区分所有者の合意形成支援等を行う民間団体の登録制度を創設し、連携強化を図っています。


施行日ですが、一部の財産管理制度、危険マンションへの勧告等については施行済み、管理計画の認定は公布後2年以内、その他の主要な部分は令和8年4月1日です。

最後に一言。

最後に一言。

築40年以上のマンションは現在全体の約2割ですが、今後10年で2倍、20年で3.4倍になると言われています。

今回の改正により、マンションの廃墟化抑止が期待されます。

~2つの老いに負けずに、元気なマンションを!~


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