2024.9.13

空き家問題で不動産業に期待

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第88回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、空き家問題で不動産業に期待です。

その1.空き家対策推進プログラム

今年6月、深刻化する空き家問題への対応の一環として、国土交通省が「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定しました。

不動産業者は、物件調査や価格査定、売買・賃貸の仲介など、空き家等の発生から流通・利活用まで一括してサポートできるノウハウを有しており、所有者の抱える課題の解決や新たなニーズへの対応が期待されることから、策定されたものです。

まず、“流通に適した空き家等の掘り起こし”として、「所有者への相談体制の強化」「不動産業における空き家対策の担い手育成」「地方公共団体との連携による不動産業の活動拡大」「官民一体となった情報発信の強化」が挙げられています。

都市に住んでいると気づきにくいことですが、地方部を中心に宅地建物取引業者の事業所数は減少傾向にあり、全国の自治体のうち14%は0店舗、22%は1~5店舗しかないそうです。また、空き家の所有者が遠隔地に居住するケースも多いことから、全国的なネットワークを活かした相談体制の充実が謳われています。地域価値共創のコミュニティや不動産証券化を活用した資金調達ノウハウの共有などの知見の共有も図られます。

その2.空き家を取扱いやすいように

次いで、“空き家流通のビジネス化支援”として、「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」「『空き家管理受託のガイドライン』の策定・普及」「媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進」「不動産DXにより業務を効率化し、担い手を確保」が挙げられています。

これは、不動産業者が空き家等を取り扱うためのビジネス面での課題の解消を図ったものです。

例えば、物件価格800万円以下の低廉な空き家等の売買に係る報酬上限を33万円としました。これまでは200万円の物件の場合は報酬上限が11万円であり、ビジネス的には厳しいものがありました。

長期の空き家等の賃貸借についても、貸主からの報酬上限額を引上げ、借主分と合計で月額賃料の2.2倍までは上乗せすることができるようになりました。

コンサルティング業務は媒介業務とは別業務であり、報酬規制の適用がないことも明確化されました。

また、活用相談から売買等の媒介まで一体で支援可能な不動産業者が「管理」を受託する場合の「標準的なルール」として、「空き家管理受託のガイドライン」が策定されました。

最後に一言。

地方では空き家は放置されがちであり、地域の環境への影響も大きい中で、このプログラムのサブタイトルの志は実に壮大です。

~地域価値を共創する不動産業を目指して~


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