法律文書の縦と横(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

第75回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、法律文書の縦と横です。

その1.縦書きと横書き

思い起こすともう20年以上前のことになりますが、私が弁護士になった2000年秋の時点では裁判文書はまだB5版縦書きでした。

B4でプリントして真ん中で折って袋とじにして綴るという、今から考えると風情のある方法ではありました。

2001年1月からは、A4版横書きに変わり、もちろん袋とじにはせず、片面印刷で提出する方法に変わって今に至ります。

ワープロソフトの主流も、縦書きで細かいレイアウトを設定できる一太郎から、自然とWordの方に移行していきました。

法律書もかつては圧倒的に縦書きでしたが、現在は横書きが主流となりました。

文庫本サイズならともかく、判型が大きな縦書きの本は、電子書籍との相性も今ひとつです。

個人的には縦書きの法律書は好きではないのですが、未だに企業法務の必携書である江頭憲治郎著『会社法』は縦書きを維持しており、こればかりは買わざるを得ません。

時代の趨勢に抗ってここまで縦書きを貫くのは、著者の信念のようなものを感じます。

とはいえ、正式な法律の条文自体は、今も縦書きです。

最上位に来る日本国憲法自体が縦書きであり、「左の~」と列挙する表現は縦書きならではのものといえるでしょう。

その2.コンマと読点

2022年4月から、公用文作成の要領が新しくなりました。

旧要領では、縦書きの場合は「、」(読点)、横書きの場合に「,」(コンマ)を用いることになっていましたが、新要領では縦書きでも横書きでも「、」(読点)を用いることになりました(横書きの場合はコンマ「,」も可)。

裁判の判決書などもコンマが使われていましたので、弁護士も裁判所に提出する書面はそれにならってコンマを使う人も多く、ワープロの設定自体で読点をコンマにしているために、メールの文章などでもコンマになっている人もいました。

もっとも、あまり気にせずにコンマではなく読点を使う人も多く、私も「なぜ日本語なのにコンマなのか?」という素朴な疑問から読点派でした。

そういうわけで、コンマ派の若手が書いた書面に手を入れるときには、読点と混在しないように注意していました。

なお、句点については従来から「。」ですが、新要領では、学術的な論文については「.」(ピリオド)も可となっています。

最後に一言。

今では縦書きといえば、新聞、雑誌、文芸書、漫画といったあたりでしょうか。

これらもウェブで読む場合は横書きでスクロールになってきているとはいえます。

縦でも横でも読めるというのは、よく考えるとスゴイことですね。

法律も 縦書き横書き 使い分け


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