その契約書ひな型古くない?(弁護士:今井 慶貴)

※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所
弁護士 今井 慶貴

一新総合法律事務所副理事長/新潟事務所所長/企業法務チームリーダー/2000年弁護士登録

1.依頼者にとってもっとも良い解決方法は何かを、依頼者の目線と、中立的な目線の両方に立って、依頼者とともに追求する。
2.解決のための道筋は、複数の選択肢を提供して、それぞれの長短を分かりやすく説明する。
3.連絡や問合わせには、できる限り迅速に対応する。仕事の質・正確性と量・スピードを両立できるように、 日々工夫する。
4.法分野はもとより、社会の動向には常に関心をもって、新しい情報を活用して幅広い分野に対応できるよう心がける。
5.依頼者はもとより、相手方も含めた関係者それぞれの人格を尊重して、事件を良い解決に導く。

 

第55回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

 

今回のテーマは、その契約書ひな型古くないです。

その1.リーガルチェックあれこれ

 

筆者は、近年は中小企業を中心とした法律顧問業務をメインにしていますので、契約書ドラフトのリーガルチェックは日常茶飯事です。

 

最近は、英文契約書に由来するような契約条項も目につくようになりました。日本国内で完結する国内企業同士の契約でも「準拠法」の定め(もちろん、日本法です)を設けたり、内容の説明は割愛しますが、「完全合意条項」とか「権利の放棄条項」「可分条項」などが設けられたりします。

 

契約書ドラフトの修正プロセスも様々です。

基本は依頼者への修正アドバイスのみですが、込み入った契約交渉の場合には、修正履歴やコメント入りのドラフトに弁護士同士で直接書き込んで何往復かすることもあります。

 

また、リーガルテックの一分野として「LegalForce」や「AI-CON」といったAIを活用した契約書審査ツールが、大手企業法務部や法律事務所で普及しつつあるようです(私の事務所でも一部導入しています)。

標準的な条項と比較して有利か不利かとか、条項の抜け漏れ等のチェックができるものです。

 

その2.古いひな型の見分け方

さて、契約書については、書籍やインターネット上のひな型が活用されることも多いのですが、中には「これはどうだろう?」というのに出くわすこともあります。

 

一つは、ひな型と実際に行おうとしている取引内容の整合性がとれておらず、契約類型とのずれや条項の過不足があるような場合です。

ひな型のカスタマイズが適切になされていないケースといえます。

もう一つは、ひな型自体が古い場合です。

そもそも表現が妙に古めかしい場合もありますが、内容的にも法改正に応じてアップ・トゥ・デイトされていないものです。

例えば、期限の利益喪失事由のところで、「和議」「会社整理」が挙げられているものは「いつのひな型やねん!」と突っ込みたくなります。

和議は2000年、会社整理は2006年に制度自体が廃止となっています。

最近では、2020年4月施行の民法(債権法)改正に伴い、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わりましたが、ひな型の修正がなされていないケースはまだまだ少なくないと思われます。

 

最後に一言。

契約書は、ビジネスの条件やリスク配分を取り決めるという意味で、いうなれば経営判断を文章に落とし込んだものといえます。

もしかしたら、使っている契約書ひな型から御社の実力が量られているかもしれません。

 

 

契約書ひな型は、会社の姿を写す鏡

 

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